演題抄録

若手臨床腫瘍医のための技術ワークショップ

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

アカデミア施設での個別化医療体制への取り組み(ABC試験)

演題番号 : TW2-3

[筆頭演者]
吉野 孝之:1 

1:国立がん研究センター東病院 消化管内科

 

がん細胞の悪性形質に不可欠なシグナル分子を標的とする「分子標的治療薬」の開発が加速度を増し、すでに多くのがん腫で臨床導入されている。HER2陽性の乳がん・胃がんに対してHER2標的薬が臨床効果を示すように、標的分子が共通するがんには臓器横断的に同一の分子標的治療薬が有効な可能性がある。これまでの臓器別に加え、分子生物学的背景も加味した治療選択が今後一般化すると考えられ、これにあわせてバイオマーカー探索も臓器横断的に行うことが望ましい。また細胞内シグナル伝達系の多重性等を考慮し、遺伝子発現・変異の網羅的解析結果をシステムとして評価し、治療効果との相関を明らかにする必要がある。一方、HER2標的薬の耐性機序は依然controversialであり、その解明には治療前の組織のみでなく、耐性獲得後の組織も用い、がん細胞の分子生物学的特性の変化を解析することが必須である。すなわち、がん治療開発のブレイクスルーを実現するためには、標的がん細胞の分子生物学的特性を臓器横断的、経時的、系統的、包括的に解明することが重要であり、生検材料などのゲノムおよびトランスクリプトームを、多数症例において治療前後で比較検討することが必要である。近い将来、がん個別化医療の実現が期待される。そのため、個別化医療実現の第一歩となる、いずれかのがん腫でdriverまたはactionable geneと評価されたマルチプルバイオマーカー検査(50遺伝子2790カ所の体細胞変異検査)の臨床導入の取り組みとして、2012年7月より国内初となる「切除不能・進行・再発固形がんに対するがん関連遺伝子変異のプロファイリングと分子標的薬耐性機構の解明のための網羅的体細胞変異検索」試験(ABC study: Analyses of Biopsy Samples for Cancer Genomics)を開始した。臨床専門医、病理医、分子生物学者、統計家、遺伝専門医などからなるExpert Panelを組織し、マルチプルバイオマーカー検査から得られた体細胞変異の情報に基礎的・臨床的解釈を加え、実地臨床で実現可能な体制整備を進めている。ABC studyを中心に当院での個別化医療体制への取り組みを紹介する。

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