演題抄録

若手臨床腫瘍医のための技術ワークショップ

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

医療経済学に関わる理論と手法

演題番号 : TW1-6

[筆頭演者]
田倉 智之:1 

1:大阪大学大学院医学系研究科 医療経済産業政策学

 

 癌治療は、身体的・精神的な負担や社会的な影響を出来るだけ軽減し、個々の患者や家族のQOLの向上・維持および社会の疾病負担を是正するとことが期待される。この癌治療システムの発展には、臨床現場が必要とする資源投入や環境整備を促すためにも、それが有する社会経済的な意義を明らかにし、関係者の間で共有することが重要となる。
 本講演では、複雑なテーマであることを認識しつつも、社会の幸福(Well-being)の最大化を目的に、準公的な医療市場における癌治療の臨床経済的な価値評価の考え方とその理論・手法やエビデンスの概況について考察を行う。
 医療分野における臨床経済的な価値評価は、介入される医療技術によって創出される成果(健康・生命の改善・維持)と投入される医療資源(例えば医療費)の比で論じられる場合がある。すなわち、「健康回復(Outcome)/消費資源(Cost)=診療パフォーマンス(Performance):価値(Value)」と整理される。
 海外では、費用対効果分析の一種として増分費用と健康改善を相対的に評価する手法(ICER)が発展してきている。このような観点から、癌治療の医療経済的な評価研究の報告を整理すると、例えば、我が国における転移性脳腫瘍の臨床経済的な評価の報告では、stereotactic radiosurgeryが1年間の余命と健康の改善を約533万円の公的負担で実現(5, 330, 000 yen/Qaly)している。
 一方、上記の概念のみでは、医療が有する価値を全て実社会において論じることが難しいという点も指摘されている。すなわち、実体経済との関係を理論化することが重要であり、単なる「相対評価」に止まらず、パフォーマンスの向上による社会経済的な影響や健康回復自体を貨幣換算する手法など、「絶対評価」に関わる理論の探究も不可欠となる。
 これらについては、多面的な議論も必要になるため、さらなる研究が待たれるところであるが、癌治療領域における診療システムの向上には、コストのみに傾注した経済的な議論に止まることなく、外科手術や化学療法、放射線治療などが有する価値(Value of Medicine)を明らかにしつつ、その価値に見合った国民負担(診療報酬)のあり方などについて、理解を深めていくことが肝要と考えられる。

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