演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

食力を駆使した身体にも精神にも優しいがん治療

演題番号 : S6-7

[筆頭演者]
東口 髙志:1 

1:藤田保健衛生大学医学部 外科・緩和医療学講座

 

 がんによる死亡は、年間30万人を越え、わが国の死因の第一位を占め、今も増加の一途を辿っている。2006年、わが国で初めて緩和ケアに関する条文が盛り込まれた「がん対策基本法」が制定され、①がんに対する研究の推進、②がん医療の均てん化の促進、③がん患者の意向を十分に尊重したがん医療提供体制の整備が盛り込まれた。このようにがん医療体制の早急な構築が必須の背景としてがん患者に対する全人的医療の確立が叫ばれている。特に、身体に直接侵襲を加える外科治療、化学療法、放射線療法などは、いずれも健常組織に対しても生体侵襲を伴っており、積極的な治療に際してはもちろんのこと、例え根治的治療が困難な患者であってもがん以外の健常な生体機能の維持・向上に努め、精神的ケアにも十分な配慮を行い、診断早期からの身体と精神にも優しいがん治療の推進が求められている。
 一方、わが国の人口動態をみると2010年の推定死亡者数はおよそ120万人であるが、20~30年後には170万人に膨れ上がる。これに対してわが国の病床数は減少の一途をたどっている。要するにおよそ『50万人の患者の命』が路頭に迷うことになる。このような将来の危惧すべき事態に対する対策のひとつが適正栄養管理の推進とシステム構築を含めたグローバル化と考える。すなわち、栄養管理を駆使した社会福祉体制を如何に早く構築するかが重点課題となる。その意味で診療報酬としての「基本的栄養管理のルーチン化」と「栄養サポートチーム(NST)加算」はその大きな問題点を解決する第一歩であり、先に述べたがん社会と高齢化社会に対する医療福祉の切り札として脚光を浴びようとしている。すなわち、将来のわが国の医療および福祉の方向は、①患者中心の医療、②チーム医療、③高齢者医療や福祉の確立、④地域連携の重視、⑤医療費削減に集約される。それを達成するためには、『食べて治す、食べて癒す』をキーワードとする病院自宅化および自宅病院化プロジェクト(在宅-訪問看護-長期療養施設―回復期施設-病院医療の一本化)が必須であり、そのためにはまず、わが国の市民、国民、なかでも特に高齢者を中心に“食力”を如何に維持し、改善させるかが大切である。代謝・栄養学を駆使し、この“食力”を形成する重要な因子のひとつずつを医学的に解明しつつ、ゆっくりとではあるがしっかりとした足並みで新しい医療体系を構築することが求められている。

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