演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

IDH変異と発がん

演題番号 : S6-3

[筆頭演者]
小川 誠司:1 

1:京都大学腫瘍生物学

 

Isocitrate dehydrogenase (IDH)は解糖系に続くTCAサイクルにおいてイソクエン酸からαケトグルタル酸(αKG)への転換を触媒する酵素である。近年、脳腫瘍や急性骨髄性白血病をはじめとする様々な癌でIDHをコードする遺伝子に変異が生じていることが明らかにされた。これらの変異は機能獲得型の変異となっており、その結果産生されるR-2-hydroxyglutarate(R2HG) が過剰に産生される結果、細胞のがん化が誘導される可能性が示唆されている。R2HGは、発がん活性を有することが示された初めての代謝産物であり、メチルシトシン酸化酵素TET2やヒストン脱メチル化酵素KDM4Cなどを阻害することによりエピジェネシスの異常を惹起して細胞のがん化を誘導すると考えられており、代謝産物の異常によって発がんが誘導されるメカニズムに関する重要な示唆を与えている。野生型IDHとの基質特異性の相違が発がん活性に本質的に重要であること、また、共存する遺伝子変異との変異アレル頻度の比較検討によれば、IDH変異はしばしば腫瘍形成の初期に寄与する創始者変異となっていることが示唆されることから、変異型IDHを標的とした分子標的薬剤の開発の可能性が期待されている。本シンポジウムでは、脳腫瘍および造血器腫瘍についてIDH変異の発がんにおける役割について遺伝学的な観点から考察したい。

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