演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

代謝とがん overview

演題番号 : S6-1

[筆頭演者]
高後 裕:1 

1:旭川医科大学 内科学講座 消化器・血液腫瘍制御内科学分野

 

「代謝とがん」は、古くてかつ最新の話題である。1931年にOtto Warbugが「癌細胞では解糖系の亢進により増殖に必要なエネルギー(ATP)を獲得する」ことを示し、ノーベル賞を受賞した。この現象は、腫瘍組織の乏血・低酸素状態にさらされているがん細胞の適応現象と考えられた。一方、進行末期がんでは、「がん悪液質」や「がん貧血」といわれる病態が存在し、その中での代謝異常と克服が長い間のテーマになってきた。がん細胞の分裂・増殖は、栄養素の細胞内取り込みやその後の代謝に依存している。そのため、腫瘍の増殖や増殖抑制に糖質、アミノ酸、脂質がどのように関与するか、それらの補や遮断や、それらの病態を形成するサイトカインネットワーク異常の研究や、栄養・輸液療法による病態に対する介入の試みも、続けられている。この流れを大きく進める研究が最近行われた。細胞の増殖関連ドライバー遺伝子の異常や、解糖系、アミノ酸、脂質代謝に関わる酵素群の遺伝子異常と深く関わり、その結果、分裂・増殖に関わるドライバー分子を標的として開発されてきた分子標的治療薬が、その下流で直接、糖やアミノ酸代謝に影響を与えるこが示されるようになってきた。糖代謝に関する酵素の遺伝子異常は、神経膠芽腫から始まり、コハク酸脱水素酵素A, B,C,Dやイソクエン酸脱水素酵素1,2他、多くの遺伝子異常が報告がされつつある。とりわけ、TCA回路のクエン酸を中心とした関連酵素の遺伝子異常が、これまでのras, myc, PI3K, PTEN, mTORなどのドライバー遺伝子異常は、p53などの癌抑制遺伝子の他に、新たな標的遺伝子として見出されたことは特筆に値する。明らかになったシグナル・細胞増殖遺伝子と代謝マップを重ねると、相互に複雑にからみあっていることが理解できる。また現在開発中の分子標的治療薬そのものが、様々な代謝異常を起こすことも明らかになってきており、逆に、「がんの代謝異常」に介入することで、新たな癌治療法の効果増強法や子標的の特定が、理論的かつ急速に進むと期待される。我々が長年行っている癌と鉄代謝の関係においても、鉄調節蛋白質2IRPP2(細胞質アコニターゼ)の遺伝子異常や、鉄原子によるHIF分解の亢進による増殖制御など新知見が出つつある。このシンポジウムでは、古典的な「がんと代謝、悪液質」に関する問題点を整理するとともに、現在最もホットとなったきたこの分野について、幅広く議論したい。

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