演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

TLR3特異標的アジュバントの開発

演題番号 : S5-3

[筆頭演者]
瀬谷 司:1 

1:北海道大学大学院医学研究科 免疫学分野

 

抗がん免疫療法は「がん関連抗原」の存在と「細胞傷害性リンパ球 (CTL)」の起動が検証されて理論化された。これを受けて臨床治験としてMHC class I に提示されるペプチドをワクチンに用いるペプチドワクチン療法が試行されてきた。しかし、予想に反して高い効果を得るに至っていない。現在、CD4 エピトープを含むロングペプチド、PD-1 抗体、制御性T 細胞(Treg)の阻害抗体などが考案され、併用されるに至っている。しかし、有害事象など未解決な問題が残されており、副作用の少ない抗がん免疫活性化法の開発が望まれている。感染症は一般に強い免疫応答を伴って終息に向かうが、がんは抗原があるにも拘わらず免疫応答を誘起しにくい。免疫に感応する腫瘍細胞は淘汰されて免疫不応答の細胞ががんに成長した、と理由付ける。しかし、がん細胞が免疫不応答に陥る理由は解明されていない。我々は長く自然免疫から抗がん免疫の誘導機構をマウス移植がんモデルで検討してきた。自然免疫は微生物のパターン分子が樹状細胞に働き、樹状細胞のクロスプレゼンテーション能とNK細胞活性化能を上げる。これに拠って抗がんCTLとNK 細胞が腫瘍退縮を誘導する。抗原の投与は退縮を更に促進する。結果、担がんマウスは極めて効果的にがん退縮と生存延長に導かれる。このことはパターン分子が抗原とともにがん免疫の成立に必須であることを示唆する。従来、アジュバント、BRM(Biological response modifier)などと総称してきた物質はパターン分子であり、多くのパターン分子はToll-like receptor (TLR)のリガンドである。我々は、アジュバントと総称してきた物質を再解析した。担がんマウスにアジュバント投与を行い、RNA誘導体が優れた抗がん活性を持つことを検証した。多数のRNA誘導体の機能解析からI型インターフェロン(IFN)誘導性のTLR3経路が樹状細胞の細胞性免疫のために最善であり、細胞質内RNAセンサー(RIG-I/MDA5)を活性化しないデザインをすればマウスはサイトカイン血症にならずにがん退縮に導けることが判明した。 これらの基礎データからヒトに安全に使えてペプチドワクチン療法を補完できる免疫アジュバントの開発を行い、完全化学合成から創薬化を展望している。本講演では、樹状細胞TLR3を介した細胞性免疫活性化の機構について概説し、新たなTLR3アジュバント免疫療法の戦略を紹介する。

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