演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

がん免疫療法の歴史と細胞治療の現状-今、求められるもの-

演題番号 : S5-1

[筆頭演者]
山口 佳之:1 

1:川崎医科大学 臨床腫瘍学

 

 近代免疫学の理解に立ったがん免疫療法の開発は1970年代に本格化した。その後、約10年毎に重要な発見があり、進化を遂げた。1980年代のサイトカインの同定と遺伝子クローニング、およびリンパ球培養の確立、1990年代のがん抗原の同定と抗原提示・認識機構の解明、および樹状細胞培養の確立、2000年代の抗体のキメラ・ヒト化・ヒト抗体の成功、regulatory T細胞やNKT細胞など新規細胞の発見、およびToll-like receptorの解明、2010年代の免疫チェックポイントの確立と制御、である。今、ついに第4の癌治療として免疫療法は市民権を得たといっても過言ではない。 米国では2010年に前立腺がんに対するがんワクチンが、2011年にはメラノーマに対する抗CTLA-4抗体が、それぞれ承認された。腫瘍縮小効果には限りがあったが、生命予後の延長が証明されたからであった。さらに、抗PD-1、PD-L1抗体も登場し、免疫チェックポイントを標的とした治療が大変注目されている。免疫療法特有の遅発性効果が理解され、immune-related response criteria (irRC)も提唱された。 活性化自己リンパ球を用いた細胞治療も、腫瘍縮小には限りがあるが、予後延長とQOL改善効果が示唆されている。前向き観察研究で膵癌54例について解析すると、生存期間中央値(MST)は5.7カ月で、5回以上投与した症例18例では12.1カ月 (95% CI: 5.4-18.7月)、前治療からの期間を考慮すれば18カ月に及んだ。QOL解析では33%の症例が『元気がでる』『調子がよくなる』など好影響を回答し、治療前後のFACT-BRM解析でも複数の項目で有意なQOL改善効果が確認された。iPS細胞の受賞を受け、再生医療の産業化に向けた法規制整備が進む中、細胞治療は低リスクの治療として再生医療とインフラを共有し、先進医療B項として承認申請を目指した臨床試験の実施が今、求められている。 がん免疫療法の科学的評価にあっては、抗がん剤の効果判定とは異なる基準が必要と考えられ、今まさにパラダイムシフトのときを迎えている。米国では、ワクチンの承認に先立って、『Guidance for Industry-Clinical Considerations for Therapeutic Cancer Vaccines-』を2011年に確定している。我が国でも日本バイオセラピィ学会において『がん治療用ペプチドワクチンガイダンス』が公開されている。 本シンポジウムでは、がん免疫療法の歴史、細胞治療の現状と方向性について述べ、上記ガイダンスのポイントを紹介する。

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