演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

印刷労働者にみられた胆管癌多発事例

演題番号 : S4-4

[筆頭演者]
久保 正二:1 
[共同演者]
竹村 茂一:1、坂田 親治:1、浦田 順久:1、西岡 孝芳:1、野沢 彰紀:1、木下 正彦:1、濱野 玄弥:1、中沼 安二:2、圓藤 吟史:3

1:大阪市立大学大学院 医学研究科 肝胆膵外科学、2:金沢大学 医薬保健研究域医学系 形態機能病理学、3:大阪市立大学大学院 医学研究科 産業医学

 

従来より、胆管癌の危険因子として、原発性硬化性胆管炎、肝内結石症、膵・胆管合流異常、肝吸虫、慢性ウィルス性肝炎などが報告されてきた。また、アフラトキシン、トロトラスト、ニトロソアミンなども危険因子として指摘されている。昨年、印刷事業場で比較的若年の元あるいは現従業員に胆管癌が高率に発生している事例が報告された。現在までに元あるいは現従業員の17例に胆管癌が確認されている。診断時年齢は25歳から45歳、全例男性であった。厚生労働省の報告時点での胆管癌16例をもとに、平成3年4月以降(現社屋に移転)に校正印刷部門に在籍した男性労働者70名を観察集団とした胆管癌の罹患リスクを算出すると、日本人男性の平均罹患率の1,225.4倍であった。これらの従業員は本件事業場のオフセット校正印刷部門に勤務しており、有機溶剤を含む多くの化学物質に曝露されていた。なかでもジクロロメタンや1,2-ジクロロプロパンなどの化学物質に高濃度に曝露されていたことが推定されている。そのため、厚生労働省によると、本件では(1)胆管癌は、ジクロロメタンまたは1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度暴露することにより発症し得ると医学的に推定でき、(2)本件事業場で発生した胆管癌は、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度暴露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いと報告されている。しかし、胆管癌の原因物質が完全に特定されたわけではない。これら17例の胆管癌診断時の臨床検査において、G-GTP、CEAやCA19-9高値例が多くみられた。画像診断上、肝内占拠性病変や胆管内腫瘤像、胆管狭窄や閉塞像、胆管拡張像などがみられた。浸潤性腫瘍は総肝管、左右肝管から肝内胆管3次分枝までの比較的大型胆管に存在した。病理学的検索では、慢性胆管傷害像と上皮内異型病変が多発性にみられた。12例には外科的治療が行われ、他の5例は進行癌であったため、化学療法や保存的治療が行われた。したがって、診断には肝機能障害や画像診断が有用で、検診が重要であると考えられる。また、これらの症例においては上皮内異型病変が多発性にみられることから、化学物質などの外的要因による慢性胆管傷害による多段階、多発性発癌のメカニズムが推測される。本件は化学物質などの環境因子が胆管癌の発癌要因となりうることを示しており、新たな職業癌と考えられる。

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