演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

アスベストと呼吸器癌ーアスベスト関連肺癌に関して

演題番号 : S4-3

[筆頭演者]
真庭 謙昌:1 
[共同演者]
酒井 康裕:2、内野 和哉:3、吉村 雅裕:3

1:神戸大学大学院医学研究科 外科学講座 呼吸器外科学分野、2:神戸大学大学院医学研究科 病理学講座 病理診断学分野、3:兵庫県立がんセンター 呼吸器外科

 

2011年の悪性新生物部位別死亡数で、肺癌は男性は5万人余りで第1位、女性は2万人近くで第2位であった。原因として、罹患数の増加とともに、5年生存率15%という非常に予後不良な悪性腫瘍であることが挙げられる。肺癌の発症には多くの環境因子の関与が示唆されており、その中でも喫煙による日本人の肺癌発症リスクは約5倍といわれ、他にも食事や飲酒などの生活習慣、放射線、発癌物質との関連も報告されている。近年、アスベスト暴露が影響する肺癌(アスベスト関連肺癌)が問題になってきている。1960~70年代に大量に輸入されたアスベストは主に建築材料に使用され、当時の労働者への暴露をもたらした。またその後もそのような建築物の解体に伴い飛散した粒子による暴露が懸念されている。一般に、アスベストの暴露量が多いほど肺癌のリスクは高くなり、暴露濃度と期間(累積暴露量)に依存するとされ、25 線維/ml x 年の暴露で肺癌のリスクは2倍になるといわれている。また、初回暴露から肺癌発生までの潜伏期間は20~40年といわれるが、10年未満の発症も10%近くみられるとも報告もあり、当施設での肺癌切除例でも、標本からアスベスト小体が検出される例は増加傾向にある。2007年11月から2008年の6月にかけて原発性肺癌にて肺切除術を施行した157例のうち、アスベスト暴露歴が疑われた連続40例について溶解法にて観察標本を作成しアスベスト小体を調べたところ37例で検出された。これは切除例の23.6%に相当し、肺癌におけるアスベストの強い関与を示唆する結果であった。アスベスト関連肺癌の治療としては、通常の肺癌と同様に、手術、化学療法、放射線治療などが選択されるが、石綿肺による肺機能障害や高度な繊維化のために治療の選択肢が制限される場合がある。前述の40例についても術前肺機能検査における一秒率は72.1%と閉塞性障害がみられたが、術式としては1例で区域切除となったのを除き、いずれも肺葉切除術が施行された。ただし、強い肺機能障害により切除術が回避された症例も背景には存在すると考えられる。予後に関しては一般的な肺癌と同等に予後不良であったとの報告がみられる。しかし、今回の切除例では、病理病期I期22例、II期11例、III期以上7例の全体において5年生存率77%と良好な結果を得た。アスベスト関連肺癌においても切除可能症例においては積極的な手術が必要と考えられた。

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