演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

中皮腫の発生病理と適切な病理診断の必要性

演題番号 : S4-1

[筆頭演者]
井内 康輝:1 

1:株式会社病理診断センター

 

中皮腫は外因による発がんの代表例として扱われる。すなわち、中皮腫患者の70〜80%には石綿(アスベスト)曝露歴があり、他に外的発がん要因が見出されていないことから、職業上あるいは生活環境の中での石綿への曝露が発がん要因とされる。しかし、石綿への推定曝露量や肺内の石綿繊維の沈着量と中皮腫発生との間に明瞭な量一反応関係はない。さらに、主として経気道的に吸引された石綿繊維の体内での移動経路も推測の域をでないし、また、胸膜、腹膜などの漿膜の中皮細胞がなぜ発がん因子である石綿の標的になるのか、移動経路からみて説明し難い。一方で中皮腫には家族内発生例もあることから、内因としての遺伝子変異も考慮する必要があるが、石綿曝露による中皮腫の発生に大きく関与すると判断される遺伝子はこれまでのところ特定されていない。病因はいかにあれ、現状の本邦では中皮腫と診断された患者は、厚生労働省管轄の労災保険あるいは環境省管轄の救済法によって患者への保障・救済がなされるため、中皮腫か否かの医学的な判断が社会的にも重要な位置をしめる。しかし、血液マーカーを含む臨床的診断や、CT、MRIなどの画像診断においては、中皮腫とする診断の決め手を欠く例も多く、病理組織診断あるいは細胞診断が必須であるとされ、それらの診断の適格性がこれまで問題とされてきた。免疫組織化学的染色の普及によって、病理学的診断の精度は著しく向上してきたが、外科的治療や集学的治療の有効と考えられる早期病変を検診などによって発見することが求められている。早期病変については特に、線維性胸膜炎と線維形成型中皮腫、反応性中皮細胞過形成と上皮型中皮腫との鑑別が問題であり、より適切な診断の手段の開発が必須である。

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