演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

肝炎ウイルススクリーニングによる肝がん罹患率・死亡率減少の可能性

演題番号 : S2-4

[筆頭演者]
建石 良介:1 
[共同演者]
小池 和彦:1

1:東京大学大学院医学系研究科 消化器内科学

 

【背景】現在にいたるまで一般人口に対するB型肝炎ウイルス(HBV)及びC型肝炎ウイルス(HCV)スクリーニングが、肝がん罹患率・死亡率を減少させるという直接的なエビデンスは存在しない。一方で、わが国の肝細胞癌の約80%がこれら肝炎ウイルスに起因している事、ウイルス肝炎の自然史において、感染・慢性炎症・発癌のプロセスが詳細に検討されており、感染と発癌の間に相応の因果関係が明らかであることから、これらウイルス肝炎の様々なステージに介入することによって、最終結果である肝細胞癌の罹患率・死亡率を減少させうるという論理には、一定の根拠がある。【方法】本研究は、平成22年度がん検診の評価とあり方に関する研究班の一環として肝炎ウイルス・肝がん検診の評価を目的として行われた。まず、肝炎ウイルス検診と肝がん死亡率の減少の間をエビデンスの連鎖によってつなぐべく、Analytic frame workを作成し、それぞれのプロセスに該当するClinical Questionを決定し、文献検索・エビデンス検討を行った。キャリアの発見からインターフェロン・核酸アナログ等の治療介入によって、肝がん罹患率が減少するかを検討した。【結果】HBVにおいては、核酸アナログ・インターフェロンによる治療介入が肝発癌リスクを減少させるという、複数のエビデンスが存在したが、レベルの高いエビデンスは、ラミブジンを用いた無作為比較試験(RCT)1篇のみであった。HCVにおいても主にインターフェロン単独療法によって肝発癌リスクを減少させるという複数のエビデンスが存在したが、発癌高リスク群である肝硬変患者における持続的ウイルス陰性化(SVR)率の低さのために効果が限定されていた。多くのエビデンスが、現在よりも1世代以上前の治療法に基づいており、現在では治療効果が大幅に改善しているために抑止効果がより大きい可能性が示唆されるが、一方で今後は倫理的な観点から無作為比較試験を行うことが困難である事も予想された。【結論】肝炎ウイルススクリーニングが、肝がん罹患率・死亡率を減少させることには一定の根拠があるが、コストベネフィットの観点からは、治療成績の向上が必須であると考えられる。

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