演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

便の検索により大腸癌リスク判定が可能である

演題番号 : S2-2

[筆頭演者]
大東 誠司:1 
[共同演者]
高橋 理:2、高橋 琢也:3、野本 康二:3、小野寺 久:1

1:聖路加国際病院 消化器・一般外科、2:聖路加ライフサイエンス研究所 臨床疫学センター、3:ヤクルト中央研究所

 

目的:大腸癌と腸内細菌叢の関連についてはいまだ明確な結論は出ていないものの、molecular biologyを応用した新しい細菌同定法の開発により両者の関連については大きな進展が期待されている。今回、大腸癌症例ならびに腺腫併存を含む健常者の便を用いて腸内細菌叢、有機酸、pHを解析し、便を用いた大腸癌リスク判定応用への可能性を検討した。
方法:対象は大腸癌88名、健常人49名(adenoma 22名、non-adenoma 27名)。全員、入院後に下剤や抗生剤による前処置を開始する前に便を採取し、採取後は直ちに4℃冷蔵、-20℃冷凍で保存した。細菌叢は16s-rRNAを標的としたreverse transcription-quantitative polymerase chain reaction (RT-qPCR) を用いて13グループの菌群を解析した。高速液体クロマトグラフィーを用いて8種類の有機酸を分析、便pHはpHメーターを用いて3ヶ所の平均値を算定し、各群間における腸内環境を比較検討した。
結果:細菌叢に関しては、大腸癌群では健常者に比較して総細菌数が有意に減少(10.3 ± 0.7 vs. 10.8 ± 0.3 log10 cells/g of feces; P < 0.001)しており、なかでもヒトでの最優勢菌群である5グループの偏性嫌気性菌(Clostridium coccoides group、C. leptum subgroup、Bacteroides fragilis group、BifidobacteriumAtopobium cluster)、ならびに2グループの通性嫌気性菌(EnterobacteriaceaeStaphylococcus)の菌数が有意に減少していた。有機酸に関しては、健常群に比較して大腸癌群では総有機酸濃度が低下しており、なかでも短鎖脂肪酸である酢酸、プロピオン酸、酪酸の濃度が有意に低下していた。pHは大腸癌群では健常群に比較して上昇していた(7.4 ± 0.8 vs. 6.9 ± 0.6; P < 0.001)。大腸癌群のなかではT stage、Dukes stageでの各因子間では腸内環境に差はみられなかった。一方、adenoma群の短鎖脂肪酸、pHは大腸癌群とnon-adenoma群の中間値を示した。
結論:大腸癌では健常者に比較して便中の腸内細菌叢、なかでも偏性嫌気性菌の減少、短鎖脂肪酸の減少、pHの上昇など、腸内環境が大きく変化しており、こうした現象は大腸癌の進展に伴う変化ではなく、すでに変化した腸内環境の中で大腸癌が発生、進展している可能性が示唆された。この結果は大腸癌のスクリーニング、あるいは大腸癌の予防にも繋がる新たな知見であり、便を用いることで大腸癌のリスク判定にも応用が可能であると考える。

キーワード

臓器別:大腸・小腸

手法別:トランスレーショナルリサーチ

前へ戻る