演題抄録

会長講演

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

ベンチから家庭まで:私の関わったがん研究とがん治療

演題番号 : PL

[筆頭演者]
高後 裕:1 

1:旭川医科大学 内科学講座 消化器・血液腫瘍制御内科学分野

 

1974年に札幌医科大学を卒業、当時の附属癌研究所内科学部門に入局したのが、腫瘍学との出会いである。当時、固形がんの治療については、内科側は癌の診断学が主で、治療といえば外科切除治療のみが有効で、黎明期の薬物療法は、腫瘍の縮小効果でのみ判定されていた。先行していた造血器腫瘍に対する薬物治療も併用療法に関する成績が出始めた頃である。幸いに、教室の対象は、造血器から消化器固形腫瘍まで、早期から進行・末期癌まですべて扱う、今の臨床腫瘍学ないし腫瘍内科学の始まりともいえる専門領域で、その後の研究、臨床での興味と行うべき業務に関する意識がめばえ、継続することができた。この間に、消化器がん診断の主流であったX線診断学は、内視鏡による診断・治療に役割を譲り、更に延命やQOLの改善につながりにくかった薬物療法が、5FU誘導体の導入、アンスラサイクリン、白金製剤その他の殺細胞性抗癌剤と、分子標的治療薬の導入により、手術、放射線治療に薬物療法を加え、エビデンスに基ずく標準治療の普及,均てん化、さらに、分子生物学、網羅的遺伝子解析により、個別化医療、精密医学への流れは急速に変貌している。私自身は、当初、消化器内視鏡診断、腫瘍マーカーの開発、坦がん生体の代謝異常、その分子生物学的解析、さらに宿主の免疫異常への介入による癌治療、実臨床での癌治療に直接関われる内科医の育成、地域・社会でのがん治療医のかかわり方など、多くの局面を経験させていただき、最終的に、腫瘍生物学の基本的研究と理解を基盤とし、かつ社会的な視野に立ち、急速な進歩を遂げている診断・治療・ケアの最先端に関わることがきる医師を養成していかなければならないことを日々痛感するに至った。もとより、一人の医師、研究者が分担できる分野は限られている。私自身も、血清フェリチンの腫瘍マーカーとしての研究を最初としたため、鉄・酸化ストレス、鉄代謝と発がん、代謝異常、鉄関連遺伝子、分子制御による癌の治療法・予防法の開発など一貫してその研究を続けている。その間に、基礎研究と、トランスレーションリサーチ、臨床研究、日常臨床、家庭でのみとりまでにオーバーラップと、突然のジャンプがあることを実感した。今回のテーマをBnch to Homeとした所以である。

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