一般演題(示説)
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LigaSure Small Jaw Instrumentを使用した甲状腺癌手術の検討 演題番号 : P38-9
1:大阪市立大学院 腫瘍外科、2:市立柏原病
【背景】甲状腺は血流に富む臓器であり,術中・術後の出血はクリティカルな病態を引き起こすために,甲状腺手術においては血管切離と止血操作が重要な鍵となる.近年ではエネルギーデバイスの開発がすすみ,甲状腺手術領域においても使用されるようになった.LigaSure Small Jaw Instrument (LSJ) は,腹部手術で用いられているLigaSureを術野の狭い頸部手術に応用した小型で操作性のよいデバイスであり,当施設においても2012年より導入している.複数の鉗子類を交換することなく『凝固』『切離』『把持』『剥離』などが行えるために,手術の効率が向上するものと考えられている.今回われわれは,甲状腺癌手術におけるLSJの有用性および忍容性について検討を行った.【対象と方法】当施設において2010年1月から2013年3月までに甲状腺癌手術を行った149例を対象とした.手術適応・術式は,甲状腺腫瘍診療ガイドラインに則り決定した.LSJ使用群74例 (49.7 %) と非使用群75例 (50.3 %) を術式,年齢,性別,病期,腫瘍径,手術時間,出血量,ドレーン抜去までの日数,在院日数,術後合併症などの因子により比較検討を行った.またドレーン排液量の総計についての検討も併せて行った.統計解析にはSPSS 13.0を使用し,カイ2乗検定,Mann-Whitney's U testなどを行い,p値0.05未満を統計学的に有意差ありとした.【結果】甲状腺全摘は87例 (58.4 %),葉切除は62例 (41.6 %) であった.中央値では,年齢59歳,腫瘍径2.0 cm,手術時間157分,ドレーン抜去までの日数は3日,在院日数は8日であった.術後合併症は39例に認められ,一過性反回神経麻痺が17例 (43.6 %) と最も多く,一過性テタニーが13例 (33.3 %), 保存的に軽快した乳び漏が6例 (15.4 %) などであった.手術時間では,全症例および葉切除においてLSJ使用群と非使用群には差は認められなかったが (p=0.086, p=0.420), 全摘においては有意に時間の短縮が確認された (p=0.017).一方で,出血量やドレーン抜去までの日数については有意な差はなかった.さらにLSJの使用の有無がドレーン排液量の総量に与える影響を検討したところ,LSJ使用群において有意に排液量が少なかった (p=0.045).【結論】甲状腺癌手術において,より剥離範囲のひろい甲状腺全摘術においてはLSJの使用により手術時間を短縮させることが可能であることが示唆された.
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