一般演題(示説)
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KRAS statusとベバシズマブ奏効率の検討~大腸癌肝転移の術前補助化学療法第二相試験~ 演題番号 : P18-1
1:東北大病 肝胆膵外科、2:宮城肝胆膵癌化学療法研究会 (Miyagi HBPCOG)、3:東北大院 統合癌治療外科、4:東北大院 消化器外科、5:東北大病 胃腸外科、6:東北大 災害科学国際研究所
【はじめに】新規抗癌剤・分子標的薬の出現で大腸癌の治療成績は劇的な向上をみせた。しかしながら、大腸癌肝転移症例は予後不良で、外科切除・化学療法の至適な使い分けが予後延長に不可欠となるが、集学的治療戦略は未だ確立されずにいる。近年KRAS statusによるベバシズマブ(BV)の奏効率に関する文献が散見され、化学療法の選択における検討項目となりうると考えられている。今回我々の多施設共同臨床試験の結果をもとに、KRAS statusとBV奏効率について検討した。
【方法・結果】我々は大腸癌肝転移に対する手術療法と化学療法の有用なcombinationを探索すべく、2006年から多施設共同で臨床試験を進めてきた。そのプロジェクトの一つが、切除可能大腸癌同時性肝転移症例に原発巣切除後、肝切除に対する術前補助化学療法を施行する第二相臨床試験(UMIN000001568)である。本試験のプロトコールは原発巣根治切除後にmFOLFOX6+BVを8サイクル(第1および第8サイクルはmFOLFOX6のみ)施行し、化学療法終了から4-8週間に肝切除を施行するもので、登録対象として肝転移の個数を10個までと規定。主要評価項目は奏効率、2次評価項目は安全性などとして、2008年6月から開始し2010年11月に登録終了し、主要評価項目の評価が終了した登録症例は47例。うちKRAS statusが確認できた18例においてsubgroup解析を行った。Wild type:13例、Mutant:5例。奏効率は、Wild typeが良い傾向にあるが有意差を認めず(t検定:p=0.06)。Kaplan-Meier法ではPFS、OSともに両群間で有意差を認めなかった(p=0.59, p=0.56)。術前治療の有害事象(AE)においては、末梢神経障害がMutantに多い傾向にあったものの有意差なく(p=0.08)、血液毒性、非血液毒性においても有意差なく(p=0.71、p=0.64)、Grade3以上の全AEにおいてKRAS statusは有意差を認めなかった(p=0.11)。 【考察】KRAS Wild typeがやや奏効率がよいが、PFS、OSに差がなく、有害事象全体からも差がなかった。KRAS statusとBVには相関が認められず、今回の検討からKRAS status に関わりなくBV投与は許容されると考える。 |
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