演題抄録

一般演題(示説)

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

表面増強ラマン散乱を用いた新しい癌関連タンパク検出法

演題番号 : P101-4

[筆頭演者]
伊藤 寛晃:1 
[共同演者]
井上 晴洋:1、長谷川 克之:2、長谷川 裕起:2、小鷹 紀子:1、鬼丸 学:1、池田 晴夫:1、木村 聡:3、大森 亨:4、工藤 進英:1

1:昭和大学 横浜市北部病院 消化器センター、2:有限会社マイテック、3:昭和大学 横浜市北部病院 臨床検査科、4:昭和大学 腫瘍分子生物学研究所

 

目的
表面増強ラマン散乱(Surface Enhanced Raman Scattering: SERS)は、レーザー照射により得られる物質固有の微弱な散乱光を増強して検出する技術であり、非破壊検査など産業界では広く利用されているが、目的物質を結合させるための基盤作成が煩雑であり、医療への応用は薬剤・毒物の微量成分分析などにとどまっている。われわれは、SERS検出に適した量子結晶の迅速作成法を開発し、SERSによる血清癌関連微量タンパクの検出を前向きに試みた。
対象と方法
院内臨床研究倫理委員会の許可のもと、同意が得られた良性疾患(食道アカラシア、胆嚢結石症)、胃癌、大腸癌患者各12例から末梢静脈血5mlを採血、血清を分離し-20℃で保存した。リン青銅合金のチップ上にチオ硫酸銀溶液を添加し、銀錯体ナノ粒子結晶(量子結晶)を迅速に形成、配列させた。銀錯体ナノ粒子結晶を陰性に電荷変換し、血清を蒸留水で10倍に希釈調整した検体20µlをチップ上に乗せ、遮光して室温で4分間静置した。ラマン顕微鏡を用いて波長632.8nmレーザーのSERSを測定、SERS強度と臨床病理学的因子を統計学的に解析した。
結果
本検出法の感度を確認する目的で、大腸癌患者血清を蒸留水で10、100、500、1000、10000倍に希釈したテスト検体の測定を行った結果、10、100、500、1000倍希釈検体で有意なSERSが検出され、SERS強度と検体濃度には有意な相関がみられた。テスト検体の測定結果から、10倍希釈血清を測定検体とした。全36検体で、レーザー照射開始から4分以内にSERS波形が検出された。良性疾患検体と比較して、胃癌Stage I(P=0.044)、胃癌Stage II-IV(P<0.001)、大腸癌Stage II-IIIa(P=0.025)、大腸癌Stage IIIb-IV(P<0.001)患者検体で有意にSERS強度が高かった。一方、SERS強度と病期の関係では、胃癌Stage I(6例)に対してStage II-IV(6例)で有意に高値を示した(P=0.031)。大腸癌ではStage Iがおらず、Stage II-IIIa(4例)に対してStage IIIb-IV(8例)で高い傾向を示した(P=0.075)。また、全検体で、SERS強度と血清総タンパク・アルブミン値には有意な関係を認めなかった。
結論
SERS強度は癌患者検体で有意に高く、微量タンパクを検出する簡便、迅速な癌スクリーニング法となり得る。SERS分析は網羅的検出と抗体等による選択的検出の両方が可能であり、レーザー分解能を高めることで、成分の特定も可能となる。さらに、未知の疾患関連物質を探索する有力な手法にもなり得る。

キーワード

臓器別:その他

手法別:トランスレーショナルリサーチ

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