演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

フェンタニル速放性製剤による新たながん疼痛治療

演題番号 : OS8-4

[筆頭演者]
大坂 巌:1 

1:静岡県立静岡がんセンター 緩和医療科

 

 痛みを自覚する進行がん患者は70~90%とされており、WHO方式がん疼痛治療法を軸とした疼痛治療が行われている。しかし、がん患者の60%程度は、「持続痛の有無や程度、鎮痛薬の有無にかかわらず発生する一過性の痛みの増強」すなわち突出痛(breakthrough pain<以下BTP>)を経験する。BTPが十分に治療されない場合、患者のQOLは低下し、不安・抑うつが強くなり、痛みはより強く感じられ、さらには疼痛治療への満足度が低下することが知られている。したがって、質の高いがん疼痛治療を行うためには、BTPを如何に上手くコントロールできるかが重要である。 BTPは数分で生じ、持続時間は約30分以内であることが多い。BTPに対して用いられるオピオイド鎮痛薬はレスキュー・ドーズ(以下レスキュー)と呼ばれているが、従来の経口速放性オピオイドの効果発現時間は約30分で最大効果は約1時間後とされており、BTPに対して十分な治療ができていない可能性がある。また、WHOは定期的なオピオイド鎮痛薬と同じ薬剤をレスキューとして用いることを推奨しているが、フェンタニル貼付剤の場合には、経口のモルヒネあるいはオキシコドン速放性製剤などをレスキューとして使用せざるを得なかった。 このような状況下において、ようやくわが国でもフェンタニル速放性製剤が導入されることになり、バッカル錠と舌下錠が発売される予定である。これらの製剤に期待されることは、1)より早く確実なBTP治療ができること、2) フェンタニル貼付剤と同一のオピオイドでレスキューが可能になること、3)在宅におけるレスキューの選択肢が増えること、4)経口投与が困難な患者におけるレスキューの選択肢が増えること、5)フェンタニル貼付剤の増量を行う上での指標となりうること、などがあげられる。 一方で、海外ではフェンタニル速放性製剤による重篤な呼吸抑制や死亡例も報告されている。さらに、レスキュー投与量は定期オピオイド投与量から一律に決めるのではなく、個々の患者に合わせて調節する必要があることは以前から指摘されている。したがって、がん疼痛治療を行う医師は、患者の状態を正確に把握しながら、薬物動態を熟知したうえでこれらの薬剤を慎重に処方あるいは投与しなければならない。本シンポジウムにおいては、新規に市販されるフェンタニル速放性製剤の特徴と注意点について解説する。

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