演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

メサドンの薬理学的特徴

演題番号 : OS8-2

[筆頭演者]
鈴木 勉:1 

1:星薬科大学 薬品毒性学教室

 

メサドンは1937年に合成され、構造的に最も単純なオピオイド鎮痛薬である。鎮痛効果はモルヒネと同等であり、安価である事から米国等で広く用いられている。本邦でも2012年9月に他の強オピオイド鎮痛剤で治療が困難な中等度から高度のがん疼痛に対する治療薬剤として承認され、本年3月より使用されている。メサドンはラセミ体で、d-l-メサドン共にμオピオイド受容体作動薬であり、天井効果がある。特に、l-メサドンはμオピオイド受容体に対する親和性が高く、メサドンの鎮痛作用の主要な部分を占めていると考えられる。また、d-l-メサドンはin vitro の結合親和性試験において、共にNMDA受容体に対して同程度の親和性を示す。一方、ホルマリン試験でd-メサドンは第1相(0-5分;ホルマリン自身による直接の化学刺激)の疼痛関連行動に対して殆ど影響を及ぼさないが、第2相(PGsなどの炎症性メディエーターが関与した局所の炎症反応による侵害受容性興奮と脊髄後角に誘発される過敏化の相乗効果)の疼痛関連行動に対しては用量依存的な抑制を示し、且つこの効果はナロキソンで拮抗されないことが報告されている。また、NMDA誘発疼痛に対してd-メサドンが抑制作用を示すことから、d-メサドンがNMDA受容体を介した鎮痛作用を発現する可能性が示唆されている。しかし、l-メサドンのμオピオイド受容体を介した鎮痛作用は低用量で発現することから、d-メサドンがラセミ体の鎮痛にどれだけ関わっているかは明確でない。次に、メサドンはノルアドレナリン(NE) とセロトニン(5-HT)の再取り込み阻害作用を有することも報告されている。ラットの脳を用いたin vitro でのメサドンの各オピオイド受容体への結合及び NA 及び 5-HT の取り込み阻害定数を検討した結果、メサドンはオキシコドン、モルヒネ及びブプレノルフィンには見られない NA 及び 5-HT 再取り込み阻害作用を有することが示された。また、NA 及び 5-HT 再取り込み阻害作用は、d-メサドンよりもl-メサドンがこれらの作用に関与することが示唆された。これらの結果から、メサドンはμオピオイド受容体を介した作用が優位であり,NMDA受容体の関与も考えられるが不明な点が多い。一方、NA 及び 5-HT の再取り込み阻害作用を介した抗侵害作用はほとんど関与しないものと考えられる。

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