臓器別シンポジウム
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Colitic cancerに対するエピゲネティックマーカーの網羅的探索 演題番号 : OS5-3
1:兵庫医科大学 下部消化管外科
[背景]我が国では潰瘍性大腸炎が増加の一途をたどっている。散在性大腸癌の分子発癌機構は、この30年間でかなり明らかにされ、臨床応用への取り組みも進んできた。一方、潰瘍性大腸炎を母体とする大腸癌は、これまで稀な癌であるが故に、ほとんど研究がなく、発癌過程が不明である。[目的]colitic cancerにおいて、癌特異的にメチル化されているマーカーを網羅的に探索する。 [方法]我々は、当院での、colitic cancerの手術症例の凍結標本を用いて、全ゲノム上の45,000 CpG siteのメチル化を詳細に検討した。散在性大腸癌のうち、2つの典型的な発癌経路であるCIN(プロモータのメチル化の少ない発癌経路)と、MIN(プロモータのメチル化の多い発癌経路)の腫瘍をコントロールとして解析した。 [結果]45万カ所のメチル化を主成分解析でパターン解析すると、colitic cancerにおけるメチル化のパターンは、散在性大腸癌の代表的な発癌経路によって分けられるCINおよびMINグループ何れのパターンを比較して全く異なるものであった。炎症を伴った背景粘膜のメチル化パターンとも異なるものであった。従って、全く特異な発癌経路をとって発癌することが示唆された。メチル化あるいはエピゲネティックな発癌機構において、colitic cancerは、散在性大腸癌にみられる概念とは全く異なる発癌の仕組みで癌化する可能性が考えられた。個々のメチル化遺伝子も従来のCIN、MINでみられるものと全く異なることが解った。Colitic cancerで特異的に高メチル化しているマーカーおよび低メチル化しているマーカーを抽出した。 [考察]Colitic cancerの発癌機構を明らかにすることは、前駆病変・早期病変の発見、化学予防法の開発、化学療法剤の開発等に多大な貢献をできる可能性が示唆された。
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