臓器別シンポジウム
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原発性肝癌の陽子線治療 演題番号 : OS24-4
1:筑波大学 放射線腫瘍科、2:筑波大学 消化器内科、3:筑波大学 消化器外科
肝組織の放射線耐容は低く、例えば30-35Gy/3-4週の全肝照射で約5%に肝腫大や腹水を伴う放射線肝障害が起こる。しかし部分肝照射なら高線量の照射に耐えうることが明らかとなったことと照射技術の向上により、局所制御に必要な線量を照射することが可能となった。加えて粒子線治療は有限の飛程を有するという特徴を生かし、照射に伴う非癌部肝組織の低線量領域を一気に低減できる。当施設では位置決め用金属マーカーの刺入とX線透視による画像誘導技術、および呼吸同期照射技術を開発し、1991年より積極的に原発性肝癌の陽子線治療に取り組んできた。様々な病態の症例の治療を経験し、肝予備能の低い症例でも高線量照射が可能なこと、合併症のため標準治療が適応困難な例や高齢者でも治療に耐えられる適応の広さが明らかとなった。陽子線の局所効果は腫瘍局在や大きさに左右されず、80〜90%の局所制御率を期待できる。急性期の治療関連障害は軽微であり、晩期には消化管が照射されたものにGr. 3相当の有害事象を、肝門部病変に胆管狭窄を数例経験している。また胸壁の有害事象としてGr. 2相当の肋骨骨折をきたすことがある。照射後の肝機能については照射されない肝組織の体積を確保することが重要なことが解っている。以上の経験から照射線量は腫瘍の局在によって使い分けており、肝末梢で他臓器に近接しない病巣は66GyE/ 10回、肝門部病巣には72.6GyE/ 22回、腸管に接する病巣は74GyE/ 37回としている。この方法により、現在は重篤な晩期有害事象をきたすことなく良好な局所制御を維持できている。生命予後は初発肝細胞癌114例:平均年齢67.8歳(44〜91)、平均腫瘍径4.1cm(1.0〜13.5)、Child A/B/C: 82/24/8、観察期間中央値37.3ヶ月の解析で、3年、5年累積生存率は各々75.9%, 48.5%であった。予後因子として肝予備能や照射体積等が重要である。現状では陽子線治療を選択する理由として標準治療が適用困難であることが最も多く、とりわけ門脈、肝静脈や胆管への脈管浸潤が重要である。Vp3,4例を対象とした解析では生存期間中央値で22ヶ月の成績が得られているが、可視病変をまとめて照射できない場合は予後がよくないこともわかっており、このような症例の治療戦略の構築が必要である。
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