演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

遺伝子診断ネットワークによる希少肺癌スクリーニングシステムの構築とその成果

演題番号 : OS2-3

[筆頭演者]
後藤 功一:1 
[共同演者]
葉 清隆:1

1:国立がん研究センター東病院 呼吸器内科

 

近年、非小細胞肺癌において様々な遺伝子異常が同定されているが、EGFR遺伝子変異を除く多くのドライバー遺伝子の頻度は低く、これらの希少肺癌を同定して治療薬の開発を行うためには革新的な方法が必要である。RET融合遺伝子は、2012年に発見された非小細胞肺癌の新しいドライバー遺伝子であり、その頻度は肺癌全体の1-2%と低いが、基礎研究においてRETチロシンキナーゼ阻害薬の有効性が確認されており、治療薬の迅速な開発が望まれる。我々は、厚生労働科学研究費補助金(医療技術実用化総合研究事業)の研究費を基に、国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター(NCC-EPOC)のサポートを受け、日本初の全国規模の遺伝子診断ネットワークLung Cancer Genomic Screening Project for Individualized Medicine in Japan (LC-SCRUM-Japan)を組織し、平成25年2月より「RET融合遺伝子陽性肺癌の臨床病理学的、分子生物学的特徴を明らかにするための前向き観察研究」に基づいて、3種類の融合遺伝子(RET、ROS1、ALK)のスクリーニングを開始している。スクリーニングされたRET融合遺伝子陽性肺癌は、7施設で実施する医師主導治験に登録しRET阻害薬の世界初の臨床応用を目指している。平成25年5月24日現在、LC-SCRUM-Japanには全国から98施設が参加し、施設倫理審査委員会で承認された71施設から154例の登録があり、129例について遺伝子解析を行った。その結果、RET融合遺伝子陽性肺癌9例(6%)、ROS1融合遺伝子陽性肺癌6例(4%)、ALK融合遺伝子陽性肺癌5例(3%)がスクリーニングされている。このうち、2例のRET融合遺伝子陽性肺癌が医師主導治験に登録され、RET阻害剤による治療が進行中である。本研究において、我が国初の全国規模の遺伝子診断ネットワークが構築され、1-2%の希少肺癌でも実際にスクリーニングが可能であることが証明された意義は大きい。今後、LC-SCRUM-Japanは、遺伝子異常に基づいた他の希少肺癌のスクリーニングにも応用可能であり、更に、全国から集めた多くの検体を利用し、コンパニオン診断薬の開発も可能な組織として重要性が高まっていくと予想される。また、本研究のような公的資金に基づくアカデミアの研究と民間企業の連携による治療開発には、今後も明らかになる新たな遺伝子異常を伴う希少がんに対する分子標的薬の効率的な治療開発のモデルケースとして、大きな期待が寄せられている。

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