演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

新規BRCA機能とそれに基づく合成致死療法の開発

演題番号 : OS13-5

[筆頭演者]
三木 義男:1 
[共同演者]
中西 啓:1

1:東京医歯大 難治研

 

合成致死性は、単独遺伝子欠損では細胞や個体に対する致死性を示さないが、複数の遺伝子欠損が同時に生じることによって誘導される致死性のことである。最近、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)と、オーロラキナーゼAは合成致死関系であり、両者の阻害剤の組合せが転移性肺がんを対象とした臨床開発につながる可能性が示唆されている。また、KRASは、多くのがんで変異が検出され標的分子として注目されてきたが、その恒常的活性機能のためKRASを標的とする新薬開発は成功していない。しかし、KRAS遺伝子変異陽性細胞に対してSTK33、TBK1やPLK1キナーゼが合成致死を誘導することが報告されている。乳がんについては、BRCA遺伝子変異陽性細胞に対しPARP1酵素を阻害することで、破綻したDNA修復機構とそのバックアップのために働く安全装置(PARP1)が排除され、「合成致死性(Synthetic lethal)」によりがん細胞死が誘導されることが知られている。BRCA1/2は、DNA修復以外に中心体制御や細胞質分裂にも関与する多機能タンパク質であることから、 DNA修復阻害剤以外の組み合わせによる合成致死性効果も期待される。そこで、BRCA1/2遺伝子変異腫瘍に対してさらに有効率の高い合成致死を誘導する新たな標的分子の探索を進めている。我々はこれまでに、BRCA2の発現抑制が中心体の複製やポジショニング、細胞質分裂の異常を引き起こすことを明らかにしてきた。さらに、BRCA2発現を抑制させた乳がん細胞(MCF7細胞)に対して、パクリタキセル(微小管脱重合阻害剤)を作用させた場合、パクリタキセル単独に比べて有意にがん細胞の増殖抑制効果を示した。この知見はこれまでのBRCA2機能障害とDNA修復分子阻害の組合せとは異なり、微小管形成を含む新たな合成致死性機構の可能性を示唆する。そこで、BRCA2ノックダウン細胞に合成致死をもたらす標的分子の候補として、中心体制御因子および細胞質分裂制御因子に注目した。その結果、、BRCA2とのダブルノックダウンによって微小管形成を抑制させる中心体構成因子(C-nap1)を見出した。また、細胞質分裂制御因子の中でミッドボディの切断に必須タンパク質としてMgcRacGAPに注目している。BRCA2とMgcRacGAPは相互作用を示さないことから、両分子が異なる機構で細胞質分裂に関与すると考えられる。現在、C-nap1とMgcRacGAPのBRCA2発現抑制にたいする合成致死性効果を詳細に検討している。

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