演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

胃癌の集学的治療における手術の役割

演題番号 : OS11-3

[筆頭演者]
黒川 幸典:1 
[共同演者]
瀧口 修司:1、森 正樹:1、土岐 祐一郎:1

1:大阪大学大学院 消化器外科

 

切除可能胃癌に対する集学的治療において、手術の果たす役割については欧米と日本によって大きく異なる。日本における標準的手術であるD2郭清は、欧州で行われた2つのランダム化比較試験(RCT)においてD1郭清と比較された結果、術後死亡率の高い危険な手術であり、生存率の向上をもたらすことはないと結論されていた。近年になってようやくD2郭清の意義が欧米でも認知され、ESMOやNCCNのガイドラインでもD2郭清が推奨されるようになったが、現在でも米国ではD0もしくはD1のリンパ節郭清しか行っていない施設が多い。米国においてpStage IB-IVの胃癌に対して術後補助化学放射線療法の意義を検証したINT-0116試験ではわずか10%の症例にしかD2郭清が行われておらず、欧州において術前術後の補助化学療法の意義を検証したMAGIC試験においてもD2郭清が行われていた症例はわずか40%にすぎない。これら欧米のRCTの登録症例(手術単独群)の5年生存率は23-26%であったのに対し、ほぼ同じ進行度の対象が登録された日本のRCT(JCOG9206-2)の登録症例(手術単独群)の5年生存率は61%であり、30%以上の開きが見られている。このように手術による局所制御力が大きく異なる欧米と日本では、周術期における補助療法の役割も大きく異なっており、欧米のエビデンスを日本にそのまま外挿することは難しい。日本では術前や術後の補助療法による遠隔制御の期待が大きい中、手術による治療成績向上を目指した大規模RCT(JCOG1001)が現在進行中である。この試験は、cT3-T4aの切除可能胃癌を対象にD2郭清に加えて網嚢切除を併施する意義を検証するものであり、非劣性試験が主流となった現在の胃癌手術領域において、生存率向上を目指した最後の優越性試験と言われている。このRCTにおいて新たな標準手術が確立することになれば、集学的治療における手術の役割もさらに増すものと思われる。

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