一般演題(口演)
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胃癌におけるPGD2シグナルの意義 演題番号 : O74-2
1:大阪市立大学大学院医学研究科 腫瘍外科学
【目的】プロスタグランジンD2(PGD2)は、PG受容体(DP1、DP2)に作用し様々な生理活性効果を示す。近年PGD2がいくつかの癌種において抗腫瘍効果を認めると報告されているが、そのシグナルはDPを介してではなく、PGD2が誘導体15d-PGJ2に変換され細胞内に取り込まれPPARγに作用する経路が示唆されている。今回我々はPGD2の抗腫瘍効果の機序およびバイオマーカーを検索する目的で、胃癌におけるPGD2および15d-PGJ2の受容体であるDPおよびPPARγの検討を行った。【方法】胃癌細胞株(OCUM-2M、OCUM12、MKN-74)、PGD2およびPPARγ阻害剤(BADGE)を用いた。胃癌細胞にPGD2,BADGEを添加し、胃癌細胞の増殖能に及ぼす影響を検討した。また、胃癌300例を対象とし、免疫組織染色にてDPおよびPPARγの発現と臨床病理学的因子の関連性を検討した。【結果】PGD2はOCUM-2M,MKN-74の増殖を有意に抑制したが、OCUM-12には影響しなかった。BADGEは、このPGD2によるOCUM-2M,MKN-74に対する増殖抑制作用を有意に低下させた。DP1、DP2は胃癌細胞いずれにも発現していなかった。一方、PPARγはいずれにも発現していたが、OCUM-2M,MKN-74の発現はOCUM-12に比べ有意に高かった。さらにPGD2は、PPARγの負の制御因子であるc-Myc,CyclinD1の発現を抑制し、BADGEはこの発現制御作用を抑制した。胃癌症例277例中PPARγは152例(54.9%)で陽性で、DPでは105例(37.9%)で陽性であった。DP陽症例はT進行症例、リンパ節転移症例に多かった。またPPARγ陽性かつDP陰性群はその他の群に比べ有意にリンパ節転移が少なく予後良好であった。【結論】PGD2はPPARγシグナルを介して胃癌細胞の増殖を抑制すること、またPPARγは感受性予測のバイオマーカーとして有用であることが示唆された。
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