演題抄録

一般演題(口演)

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

バルプロ酸ナトリウムの HDAC 阻害薬としての乳癌細胞増殖抑制機序の検討

演題番号 : O7-6

[筆頭演者]
馬渡 俊樹:1 
[共同演者]
井口 雅史:2、二宮 致:2、高村 博之:2、北川 裕久:2、伏田 幸夫:2、藤村 隆:2、太田 哲生:2

1:加賀市民病院 外科、2:金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科

 

(目的)近年、ヒストンの脱アセチル化阻害作用のあるHDAC阻害薬の抗腫瘍効果が注目されている。抗癲癇薬であるバルプロ酸ナトリウム (VPA) にもHDAC阻害作用がある。VPA の乳癌細胞への増殖抑制効果やその機序について検討した。(対象と方法)ER, HER2発現の異なる4種類の乳癌細胞株(MCF-7, SKBR-3, MDA-MB-231, BT-474)を用いて増殖抑制作用、HDAC阻害作用、分化誘導、アポトーシス誘導作用を検討した。また、非ヒストン蛋白の脱アセチル化阻害作用としてαチュブリン、HSP70、HSP90にも着目し増殖抑制機序についても検討した。(結果)VPA は4種類の乳癌細胞株すべてに対し、細胞株により強弱はあるが濃度・時間依存性に増殖抑制作用を有することをMTS assay にて確認した。GI50 (72h) は1.8mMから8.1mMであり、HER2陽性株であるSKBR-3、BT-474において増殖抑制が強く、中毒域に達しない有効血中濃度と同等の濃度(1mM)にて、増殖は抑制された。SKBR-3におけるヒストンH3のアセチル化を確認し、VPAのHDAC阻害作用を確認した。SKBR-3, BT-474において、p21WAF-1およびcleaved caspase 3の発現の増加をWestern blotにて確認し、VPA 1mMで乳癌細胞が分化およびアポトーシスへ誘導されることを確認した。一方、SKBR-3において、免疫沈降とWestern blotを用いてVPA 1mMによるαチュブリンとHSP70のアセチル化は確認できたが、HSP90のアセチル化は確認できなかった。 HSP90はHSP70など複数の蛋白と複合体を形成しシャペロン機能を発揮するため、VPAは HSP70 のアセチル化による機能抑制を介して、間接的にHSP90の機能を阻害している可能性がある。αチュブリンのアセチル化には長時間を要し、HSP90をアセチル化するHDAC6活性がVPAでは弱いことを示していた。(結語)VPAの乳癌細胞に対する増殖抑制効果は、HDAC阻害による直接の分化、アポトーシス誘導のほか、HSP70 のアセチル化を介する間接的なHSP90機能阻害にて、HER2などのクライアントプロテインを阻害することによる分化、アポトーシス誘導がその機序として考えられる。

キーワード

臓器別:乳腺

手法別:基礎腫瘍学

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