演題抄録

一般演題(口演)

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

麦芽乳酸菌から分泌されるポリリン酸は大腸癌に対する抗腫瘍効果を有する

演題番号 : O58-4

[筆頭演者]
坂谷 慧:1 
[共同演者]
藤谷 幹浩:1、小西 弘晃:1、瀬川 修一:2、嘉島 伸:1、上野 伸展:1、田中 一之:1、堂腰 達矢:1、藤林 周吾:1、安藤 勝祥:1、後藤 拓磨:1、稲場 勇平:1、伊藤 貴博:1、盛一 健太郎:1、高後 裕:1

1:旭川医科大学 内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野、2:サッポロビール 価値創造フロンティア研究所

 

【背景・目的】これまでの疫学研究や基礎研究でプロバイオティクスが抗腫瘍効果を有することが報告されている。しかし、プロバイオティクスが産生する抗腫瘍活性物質は同定されておらず、抗腫瘍効果のメカニズムは明らかにされていない。われわれは麦芽乳酸菌から分泌されるポリリン酸が腸管の炎症に対して腸管粘膜保護作用を持つことを報告した。また、ポリリン酸は骨髄腫細胞やメラノーマ細胞の肺転移に対して抗腫瘍効果を示すことが報告されている。そこで本研究では、麦芽乳酸菌による抗腫瘍効果を明らかにし、その効果における菌由来ポリリン酸の役割について明らかにする。
【方法】(1)大腸癌細胞株SW620に麦芽乳酸菌の培養上清を加え、MTT assayを用いて細胞生存率を調べた。(2)同様にSW620に L. brevisの培養上清とポリリン酸の分解を促進する酵(ポリリン酸キナーゼ;PPK)を加え、MTT assayで評価した。(3)各種大腸癌細胞株(Caco2, SW480, SKCO-1,SW620)およびラット正常腸上皮細胞(IEC)にポリリン酸を加え、MTT assayで評価した。また、Ki-67抗体、Annexin V抗体を用いて免疫染色を行い、細胞増殖能およびアポトーシスについて調べた。プロテインアレイを用いて細胞内シグナル伝達系関連分子の活性化を分析した。(4)ヌードマウスにSW620を皮下注射したXenograft modelにポリリン酸とATPを連日皮下注射し、腫瘍径を測定した。
【結果】(1)1/100希釈した麦芽乳酸菌培養上清を加えるとSW620細胞が減少した。(2)PPKを加えた群では24, 48時間後、有意に細胞減少の抑制がみられた。(3) ポリリン酸100µg/ml投与により48時間後の細胞増殖率は、SW620で29%、SW480で56%、Caco2/bbeで65%、と有意に低下した。一方、SKCO1およびIECでは増殖率に変化が無かった。 ポリリン酸を投与したSW620細胞ではAnnexin Vの発現が亢進したが、Ki-67については変化がなかった。また、細胞内シグナル伝達関連分子でるERK1/2の異常活性化が軽減した。(4)ポリリン酸投与群では時間依存性に腫瘍の増殖抑制が認められた。【結論】麦芽乳酸菌には抗腫瘍効果があり、その作用は乳酸菌が分泌するポリリン酸によって仲介されている。ポリリン酸は大腸癌細胞におけるERKの異常活性化を軽減しアポトーシスを促進していることが明らかとなった。今後の研究により、プロバイオティクス由来の物質が新規抗腫瘍薬となり得ることが示唆された。

キーワード

臓器別:大腸・小腸

手法別:基礎腫瘍学

前へ戻る