演題抄録

一般演題(口演)

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

がん特異的エントリーと高効率スプレッドを両立した腫瘍溶解ヘルペスウイルスの開発

演題番号 : O36-3

[筆頭演者]
若田 愛加:1 
[共同演者]
大久保 優:1、福原 武志:1、Justus B Cohen:2、Joseph C Glorioso:2、中野 賢二:3、熊谷 泉:4、黒木 政秀:5、濱田 洋文:1、内田 宏昭:1

1:東京薬科大学生命科学部腫瘍医科学研究室、2:ピッツバーグ大学、3:九州大学、4:東北大学、5:福岡大学

 

難治性悪性腫瘍に対する新しいバイオセラピーとして、単純ヘルペスウイルス(HSV)を用いた腫瘍溶解ウイルス療法が大きな期待を集めている。私たちは最近、HSVのがん標的化改変に独自に成功した。ウイルス表面のエンベロープ糖タンパクgDを本来のHSV受容体に結合不能とすると同時に、EGFR・CEAなどがん細胞表面マーカーに対する単鎖抗体(scFv)を挿入した結果、標的がん細胞のみに侵入(エントリー)できる標的化HSVとなった。この標的化gD変異ウイルスに、私たちが同定した糖タンパクgBのエントリー促進変異を組み合わせることにより、標的化エントリーの効率が約100倍高まり、野生型ウイルスが本来のHSV受容体を介してエントリーするレベルにまで至った。動物実験では、マウス皮下および同所性脳腫瘍モデルにて標的化ウイルスの腫瘍内投与により強力な抗腫瘍効果を認めた上、標的化ウイルスを経静脈投与するとウイルスの腫瘍への強い集積(正常臓器の100-1,000倍)を認めた。さらにマウス脳内投与後の毒性評価では、標的化ウイルスは野生型ウイルスの致死量の10万倍の粒子数を投与してもマウスに異常を生じないという非常に有望な結果を得た。残る課題としては、標的化エントリー後のウイルスを腫瘍塊の中で効率よく伝播(スプレッド)させ、正常組織を傷害することなくがん細胞を殺傷し尽くすことが挙げられる。私たちの標的化HSVは標的抗原を発現するヒトがん細胞各種において非常に効率のよいエントリーを示したが、興味深いことに、がん細胞によっては、標的抗原を発現しエントリーを許容するにもかかわらず十分な細胞間伝播が得られないスプレッド抵抗細胞も存在することが判明した。この問題を克服するために、HSV感染による細胞融合を促進することが知られている遺伝子変異(syn変異)を利用することを試みた。EGFR標的化gD変異ウイルスのgBあるいはgKにsyn変異を挿入した組換えウイルスを作製し、EGFRを高発現する複数のヒト膵がん細胞株に感染させた。その結果、親ウイルスではプラークを生じなかったスプレッド抵抗細胞株においても、syn変異の挿入により多核巨細胞の形成による大きなプラークが観察された。本研究成果は、特異的エントリーと高効率スプレッドを両立した理想的ながん標的化ウイルスの早期実用化をもたらしうる。

キーワード

臓器別:その他

手法別:遺伝子治療

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