演題抄録

一般演題(口演)

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

卵巣子宮内膜症由来の類内膜境界悪性腫瘍術後に類内膜腺癌を発症した一例の遺伝子解析

演題番号 : O26-5

[筆頭演者]
佐川 義英:1 
[共同演者]
古村 絢子:1、鮫島 大輝:1、寺田 光二郎:1、中村 泰昭:1、落合 尚美:1、中川 圭介:1、中江 華子:1、五十嵐 敏雄:1、山崎 一人:2、石田 康生:2、梁 善光:1

1:帝京大ちば総合医療セ 産婦人科、2:帝京大ちば総合医療セ病理部

 

【緒言】子宮内膜症から卵巣癌が発生することはに既知である。しかしながら発生母地、発症機転等の詳細は不明である。今回我々は類内膜境界悪性腫瘍の術後6年経過後に残存した同側卵巣に類内膜腺癌を発症した1例を経験した。本発表ではその臨床経過・病理組織を呈示し、さらに2回の摘出標本の遺伝子検索を行い、興味深い結果を得たので合わせて報告する。【症例】症例は32歳。初回治療開始時は0経妊0経産であった。200X年原発性不妊症、子宮筋腫、両側卵巣腫瘍にて当科初診した。子宮内膜症性嚢胞の診断で腹腔鏡手術を施行したが、右卵巣表面に突出した白色乳頭状腫瘍を認めたため開腹手術に変更して両側卵巣嚢腫切除術を施行した。病理検査で当時の分類で卵巣異型子宮内膜症(現在の分類で類内膜境界悪性腫瘍)と診断されたが、挙児希望があったため追加治療はせず不妊治療を先行させる方針とした。3年後にART妊娠で正常経腟分娩となり、分娩後も継続的に外来で経過観察をしていたが、6年後に7cm大の右卵巣腫瘍が出現し再手術となった。迅速病理診断では境界悪性であったため単純子宮全摘術+両側付属器切除+大網部分切除を施行したが、最終病理診断で類内膜腺癌G2(pT1cNxMx)であることが判明した。なお再開腹によるリンパ節廓清は患者の希望もあり施行せず、後治療としてTC療法を行った。【摘出標本遺伝子検査結果】初回手術時に採取された腫瘍、および、6年後に採取された腫瘍のいずれにおいてもβ-catenin遺伝子 exon 3にS37F (TCT to TTT)、PIK3CA遺伝子 exon 20にH1047R (CAT to CGT)の変異を認めた。KRAS2遺伝子、PTEN遺伝子に変異は認めなかった。免疫組織染色では6年後に採取された腫瘍の類内膜腺癌にのみHer2の過剰発現が見られ、DISH (double colored in situ hybridization)において17染色体の異数性異常を認めた。【考察】卵巣子宮内膜症における類内膜境界悪性腫瘍から類内膜線癌への連鎖は確立した概念はない。本症例は2回の手術検体から境界悪性腫瘍が6年後に悪性化したと考えられ、境界悪性類内膜腫瘍の自然史を示した症例と推測される。Wnt/Akt経路の遺伝子異常を伴う境界悪性類内膜腫瘍に染色体不安定性を助長する要因が加わることにより悪性変化したものと想定すると、子宮内膜症の悪性化の機序を解明する一助となる可能性がある。

キーワード

臓器別:卵巣

手法別:病理

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