演題抄録

第19回中山恒明賞受賞記念講演

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

門脈カテーテルバイパス法の開発と膵癌手術への応用

演題番号 : NK

[筆頭演者]
中尾 昭公:1,2 

1:名古屋大学 名誉教授、2:名古屋セントラル病院 院長

 

昭和48年(1973年)に名古屋大学医学部を卒業し、関連病院で消化器外科医を目指し修練を開始した。なかでも膵頭十二指腸切除術には興味を抱いた。当時先輩から門脈に浸潤している癌は切除不能で手を出すなと教えられていた。昭和55年(1980年)に名古屋大学第二外科に帰局し、肝胆膵の研究室に所属した。Fortnerのregional pancreatectomy(1973年)の論文は本邦の膵臓外科医に強烈な印象を与え、膵癌拡大手術が積極的に行われるようになってきていたが門脈切除再建は高難度な手術術式とされていた。その理由として消化器外科医が血管外科に習熟していないことと、安全な門脈遮断法が確立されていないことがあげられた。抗血栓性材料である親水性ヘパリン化材料(東レ、アンスロン®)より、門脈血を体循環や肝内門脈へバイパスする方法を考案し、臨床応用した。本法を門脈カテーテルバイパス法(Nakao Bypass)と名付け、本法の応用にて門脈遮断中の門脈うっ血は回避され、また肝動脈同時遮断中の肝阻血をも回避することが可能となった。そして門脈遮断は時間的制約から開放されて安全に施行可能となった。1981年に膵頭部癌に対して本法を用いた第1例目の門脈合併膵全摘術を安全に施行した。以来本法を利用して膵癌手術を中心に積極的に門脈切除を安全に施行し、膵切除術は1000例を越え、門脈合併切除数も400例を越えるに至っている。また多くの門脈切除再建術を経験するなかから膵癌手術における重要な基本的手術手技のmesenteric approach(Nakao Approach)を考案し、non-touch isolation膵頭十二指腸切除術(isolated PD)を完成させた。一方、膵頭部の良性あるいは低悪性度病変に対する機能温存術式としての膵頭十二指腸第II部切除術(PHRSD)の術式も完成させ、内外でも多く採用されるに至っている。膵癌外科治療は最近の補助化学療法の進歩とともにその成績も向上しつつある。私のこれらの研究を通して膵癌治療の過去・現在・未来についても述べてみたいと思っている。

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