演題抄録

基調講演

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

軟らかく、動き、浸潤し、増殖する人間の腫瘍への放射線治療

演題番号 : KL-3

[筆頭演者]
白圡 博樹:1 

1:北海道大大学院医学研究科 病態情報学講座 放射線医学分野

 

がんの放射線治療は、臨床的、生物学的、物理学的、かつ技術的な考察に基づき、電離現象を時空間座標上に適切に配置するがん治療である。悪性腫瘍は軟らかく、(臓器の動きに従い)動き、正常組織に浸潤し、増殖するので、腫瘍細胞だけに十分な照射をして、混在する正常組織構造を選択的に残す戦いとも言える。 軟らかく、動き、浸潤し、増殖する腫瘍に対する治療としては、理論的に腫瘍と線量分布の間に時間的・空間的なギャップがない組織内密封小線源治療が最も優れた解決策になり得る。しかし、小線源治療は技術的な再現性を保つことが難しい。すべての外部放射線治療技術は、小線源治療よりも優れた技術的再現性を保ちながら、腫瘍と線量分布の間に生まれる時間的・空間的なギャップを小線源治療レベルに近づけることを目指すべきである。腫瘍の位置、動き、浸潤範囲、増殖スピードを1ミリ、1秒単位で把握することが今後の外部放射線治療技術の進むべき一つの道である。リアルタイムな腫瘍サロゲートの3次元位置モニター、同期照射技術の組み合わせは、外部放射線治療の時空間精度を向上できる。腫瘍のサイズが小さく形状・進展範囲が単純であれば、X線治療は小線源治療の治療成績に匹敵する効果を、肺・肝臓・前立腺等で達成できる。最近、島津製作所は、北海道大学医学物理部門と共同で開発した2台の透視装置による動体追跡技術を、バリアン社のリニアックにて実現することができるSyncTraXを開発し、その薬事承認を得た。この装置では、従来不可能であった、体内に刺入した3個の金マーカーを同時に追跡することができ、リアルタイム4次元放射線治療に進化することができる。 より大きな、あるいはより複雑な形状の腫瘍に対しては、線量分布に優れる陽子線治療装置が外部放射線治療の適応範囲を広げることができる。陽子線治療の費用効果比は、治療装置のコストと治療によって得られる生命の長さと質で決定される。我々は、日立製作所と共同で、ガントリーに2台の透視装置を搭載し、コーンビームCT撮像と動体追跡を可能とした小型スポットスキャン専用陽子線治療装置を開発し、北海道大学病院にて今年度中の治療開始を目指している。 さらに、放射線抵抗性がんを制御し、放射線治療後の臓器温存を促すために、さまざまな新たなチャレンジがされつつある。

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