演題抄録

基調講演

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

我が国の肺がん臨床試験の国際競争力

演題番号 : KL-2

[筆頭演者]
中川 和彦:1 

1:近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門

 

ALK阻害剤である新規分子標的治療剤、クリゾチニブがEML4-ALK融合遺伝子陽性肺癌に対して承認されて1年が過ぎた。EML4-ALK遺伝子融合は肺腺癌のわずか5%に過ぎない。にもかかわらず、複数の次世代ALK阻害剤の開発がクリゾチニブの後を追ってしのぎを削っている。日本からは、2つの製薬企業がこの戦いに参戦している。今後のALK阻害剤臨床開発の論点は、(1)クリゾチニブの副作用はALK阻害によるものか?ALK選択性の高い次世代ALK阻害剤では、果たして副作用軽減とともに十分な増量が可能か?(2)不可逆性受容体結合型である次世代ALK阻害剤はクリゾチニブ耐性を克服できるか?そして(3)多彩な耐性機構の中で、どのような耐性機構を克服できるか?(4)他の薬剤との併用で治癒を導き出すことが出来るか?といったところだろうか?それにしても、複数のALK阻害剤が入り乱れる地域の臨床開発拠点としての価値は極めて高い。それぞれのALK阻害剤の臨床評価はその様な地域でこそ可能なのだ。米国が薬剤開発拠点として確固たる地位を保てるのは市場の大きさだけではない。すべてのシーズが米国で最初の臨床評価を受ける。臨床開発の開始時に薬剤評価が可能であり、かつ開発形態の柔軟性を持つ点が米国臨床開発の国際競争力の原点である。近年におけるALK阻害剤の開発に触れて、薬剤開発拠点としての価値形成の秘密が少し分かったような気がする。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の臨床開発はもう一つの日本肺癌腫瘍学の強みと言っていいだろう。最初のEGFR-TKIであるゲフィチニブが世界に先駆けて日本で承認されたこと、EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌の頻度が欧米より高いことから遺伝子診断の実用化がいち早く普及した。ALKも含めて遺伝子診断を基盤とした日常診療が確立している唯一の国であることは、肺癌の臨床試験全般における日本の国際競争力の原点と言えるだろう。今後の我が国における肺癌治療成績の向上と肺癌臨床試験の国際競争力は耐性機構の遺伝子診断を含めた総合的な生物学的な肺癌診断能力に大きく依存している。まさに、"New Era of Cancer Teranostics"の到来である。

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