演題抄録

基調講演

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

産学連携にかかる医学研究と利益相反(COI)マネージメント

演題番号 : KL-13

[筆頭演者]
曽根 三郎:1,2,3 

1:JA高知病院 、2:徳島大学、3:日本医学会利益相反委員会

 

難治性疾患の診断法、治療法、予防法の開発は国民的な課題で科学技術基本計画、医療イノネーションなどの推進に産学連携が欠かせない。しかし、産学連携が活発化すればするほど、研究者個人や所属機関は企業から得る利益が大きくなり、中立的な姿勢が揺らぎやすく、企業よりとなりやすい。その改善には企業から研究者への利益供与(金銭など)の透明化が基本原則であり、アカデミアの利益相反(COI, Conflict Of Interest)マネージメントの取り組みが重要となる。米国は1980年から産学連携が国策として強化されたのに伴い、1989年にNIH、全米医科大学連合が臨床研究のCOIマネージメントガイドラインを公表した。しかし、医師と企業との金銭関係の透明化は必ずしも達成できておらず、厳しいCOI開示義務を医師に課している。2000年、ヘルシンキ宣言改訂版にCOIマネージメントが盛り込まれ、厚労省の臨床研究の倫理指針(2003)も同様に改定されたが、被験者保護の視点であり、産学連携による臨床研究の実施に関する指針でないため、特に医師主導の臨床試験には疑惑が噴出しやすい。日本の医学研究費は50%が外部資金(65%が奨学寄付金)に依存し、産学連携が産学癒着に見られやすい。特に、高額寄付金や多額の講演・執筆料を受けている医師が標的となり、中立的な立場を確保できるのか、マスコミで何度も問題視されてきた。米国に17年遅れて文科省検討班が「臨床研究の利益相反指針の策定に関するガイドライン」(2006年)を公表した。2011年に日本医学会が「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」を公表し、2012年時点で医科系大学の92%、日本医学会118分科会の58%がCOI指針を策定しているが、産学連携の透明化はやっと緒に就いた状態である。2010年、米国は医療関連企業に医師、医療機関への支払額の公開を義務付けるべく法制化した。日本の製薬協も2011年に「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を公表し、産と学ともに透明性確保に向かっている。最近発覚したバルサルタン事件では医師主導の臨床試験と企業との関わり方、特に統計解析、解釈、論文発表にかかるCOI開示の在り方について多くの問題点が提起され、日本発の大規模臨床試験の発表論文に対する国際的な信頼性を揺るがしている。医学研究、特に臨床研究の国際競争が激化する中、産学連携活動の透明性を確保するためにCOIマネージメントの問題点、改善点を概説したい。

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