演題抄録

基調講演

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

クラウド・コンピューティング時代の地域診療ネットワーク

演題番号 : KL-1

[筆頭演者]
吉田 晃敏:1 

1:旭川医科大学 学長

 

医師の約6割が札幌市と旭川市に偏在する北海道では、従来から都市部と地方との医療格差が大きな問題となっている。旭川医科大学では、インターネットが本格的に普及する以前の1994年に、患部などの動画映像をリアルタイムに送受信できるシステムを用いて地方の医療機関を支援する遠隔医療を開始した。さらに1999年には、附属病院内に国内初の「遠隔医療センター」を設立し、これまでに国内50医療機関、国外4ヵ国(9医療機関)と接続してきた。
遠隔医療を開始した当時は、通信回線にISDN(サービス総合デジタル網)を用いることが主流であり、本学においてもINS net64(x3回線)やINS net1500を用いて遠隔地の医療機関と交信していた。その後、インターネットの普及に伴い、安価で高速な回線が利用可能となったことから、2005年にISDNから光へ移行し、「拡張性のある遠隔医療ネットワーク」を整備した。同時に、遠隔医療システム本体も更新し、それまで標準画質(SD)で交信していた映像を「高精細(HD)」化した。さらに、2D映像を3D(立体視)化するための研究開発を1998年から着手し、2005年には「3D-HD遠隔医療システム」を完成させ、患部などの奥行き情報も伝達できるようになった。
一方、リアルタイムに行う遠隔医療は、支援側と支援依頼側双方のスケジュール調整が難しい場合もあるため、VPN(仮想プライベートネットワーク)を介して医師同士を結ぶ非リアルタイム型の「遠隔相談システム」を独自に開発し、検査結果や画像データなどを共有しながらいつでも症例の相談ができる環境も構築した。また、本学の医師・看護師が遠隔から退院患者をフォローアップできる「遠隔在宅医療支援システム」も開発した。これにより、通院中から退院後(自宅療養中)まで「切れ目のない医療支援」が行える体制が完成した。
本講演では、旭川医科大学における遠隔医療の推進の歩みを紹介するとともに、我々が開発したP2P(Peer To Peer)技術を用いた「医療情報の共有」や、緊急性・重要性の高い医療情報を優先的に伝送できる「ネットワーク制御技術」など、これからの「診療連携ネットワーク」に求められる様々な技術についても紹介したい。

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