演題抄録

口演

開催概要
開催回
第58回・2020年・京都
 

腫瘍優先的にP53応答を引き出す小児白血病の新たな分子標的治療戦略

演題番号 : O46-3

[筆頭演者]
河原 康一:1 
[共同演者]
古川 龍彦:1

1:鹿児島大学・分子腫瘍学

 

近年、MDM2阻害剤の臨床開発が進んでおり、P53経路を活性化する分子標的治療薬が注目されているが、MDM2阻害は正常細胞にもP53応答を引き起こし、血小板減少等の造血障害がみられ、副作用を軽減したP53経路を活性化するがん分子標的薬の開発が望まれている。我々はこれまでに、遺伝子欠損マウス等の解析から、PICT1/RPL11が制御する核小体ストレス応答機構が、DNA損傷なしにP53を増加させ、腫瘍化進展を抑制することを見出した。さらにデータベース解析から、急性リンパ性白血病(ALL)等の腫瘍でPICT1とRPL11の発現がともに高いことを明らかにした。このことからPICT1/RPL11結合を標的とし核小体ストレス応答を誘導する薬剤は、P53応答により腫瘍化進展を抑制できる可能性が考えられた。そこで我々は、独自に核小体ストレス応答を特異的に検出できるセルベースのレポーターシステムを構築し、20万種の化合物ライブラリーのスクリーニングによって、この応答を特異的に活性化し、P53依存性の小児ALL細胞を殺傷するシード化合物を同定した。次に構造展開を検討し、化合物の構造活性相関を明らかするとともに、小児ALL細胞でのIC50値が 30nM未満と活性や特異性が高まったPrelead化合物を同定した。興味深いことにこの化合物は、正常なヒト血液細胞に比して、小児白血病細胞に、100倍以上も感受性が高く、MDM2阻害剤と比べ正常な血液細胞への毒性が低い可能性が考えられた。さらにこの化合物は、PICT1/RPL11結合を阻害し、核小体ストレス応答を誘導するメカニズムを有する。このように腫瘍で高い分子結合を標的とし、P53経路を活性化させることで、正常細胞への作用を抑え、強い抗腫瘍作用を発揮するPrelead化合物を見出した。DNA損傷性抗がん剤で治療する小児白血病患者は、2次がんや副作用に悩まされ、治療抵抗性となり再発するなど、新たな治療法が求められている。今後開発を進めることで、遺伝毒性なく副作用を軽減した新たな分子標的治療薬を開発でき、治験中のMDM2阻害薬に比べ優位性をもち、世界初の機序でP53経路を作動させる小児白血病の新たな治療戦略の確立が期待できた。

キーワード

臓器別:小児

手法別:分子標的治療

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