演題抄録

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開催回
第58回・2020年・京都
 

リンチ症候群が疑われた患者における子宮内膜・卵巣の重複癌の病理組織学的特徴

演題番号 : WS1-3

[筆頭演者]
山口 宗影:1 
[共同演者]
吉積 貴子:1、斎藤 文誉:1、本原 剛志:1、田代 浩徳:2、大場 隆:1、三上 芳喜:3、片渕 秀隆:1

1:熊本大学・産科婦人科、2:熊本大学・女性健康科学、3:熊本大学附属病院・病理部・病理診断科

 

【緒言】
リンチ症候群における卵巣癌の累積発生率は、大腸癌や子宮内膜癌と比較すると低く約10%であり、その発症機序は不明な点が多い。今回われわれは、リンチ症候群が疑われた症例において、特徴的な病理組織学的所見を呈し子宮内膜と卵巣の重複癌と診断した症例を経験したため、リンチ症候群における卵巣癌の発症機序を考察し報告する。
【症例】
症例は49歳の3妊2産の女性で、36歳時に大腸癌の加療歴を有し、アムステルダム基準Ⅱの全てを満たす家族歴からリンチ症候群が強く疑われた。診察所見ならびに画像検査より子宮内膜と左側付属器に腫瘤が認められ、子宮内膜と左側卵巣の重複癌が疑われ、拡大子宮全摘出術、両側付属器摘出術、骨盤リンパ節郭清術、骨盤腹膜広範切除術、大網切除術が行われた。腹水細胞診は陰性で、子宮内膜には子宮内膜上皮内腫瘍とともに類内膜癌(G1)が認められ、リンパ球の浸潤が多くみられた。左側卵巣には類内膜境界悪性腫瘍が併存する類内膜癌(G2)がみられ、右側卵巣表面には子宮内膜症と連続する類内膜癌(G1)が観察された。免疫組織化学法では子宮体部病巣ではARID1AとPTENに加え、MSH2とMSH6の発現の消失がみられたことから、家族歴とあわせてリンチ症候群におけるMSH2遺伝子の生殖細胞系列変異の存在が考えられた。卵巣の病巣では、同様にMSH2とMSH6の発現の消失がみられた。以上の所見から、子宮および卵巣の病巣はそれぞれが独立してMSH2遺伝子変異を契機に発生したことが考えられた。子宮内膜癌IA期、卵巣癌IC期の重複癌と診断され化学療法を施行された。術後10か月が経過し再発はみられていない。
【結語】
本症例において、卵巣の子宮内膜症と連続する類内膜境界悪性腫瘍から進展した類内膜癌の病巣は、子宮内膜病変と同様にMSH2遺伝子の生殖細胞系列変異の存在が示唆された。リンチ症候群において、卵巣子宮内膜症は卵巣癌の発生母地となりうることが示唆された。

キーワード

臓器別:卵巣

手法別:病理

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