演題抄録

会長企画シンポジウム

開催概要
開催回
第58回・2020年・京都
 

子宮頸癌・体癌に対するロボット支援手術の現状と問題点

演題番号 : SSY1-6

[筆頭演者]
西 洋孝:1 

1:東京医科大学・産科婦人科

 

低侵襲手術の普及とともに、婦人科領域においても腹腔鏡手術に比べ手技的に低難度のロボット支援手術が注目されている。2012年にWalkerらは、開腹手術と比較し腹腔鏡手術により子宮体癌の再発リスクが上昇せず、OSにも差がなかったと発表した。この結果を踏まえ、子宮体癌に対するロボット支援手術を含めた低侵襲手術(MIS)について様々な解析がなされたが、総じて開腹術に比してMISが優れるという結論であった。また、腹腔鏡手術に比べ、ロボット支援手術では出血量が少なく術後合併症が少ないという報告も散見される。この結果、米国においては、子宮体癌に対する手術の実に約8割がロボット支援下に行われている。子宮頸癌についても、当初複数のmeta-analysisの解析結果などからMISが開腹術に優るであろうと考えられていた。しかし、RamirezらのRCTやMelamedらの大規模研究によると、開腹術に比べ、MISでは再発率が高く声明予後も不良と判明した。我々の施設における治療成績においても、子宮体癌はMISによってその予後が毀損されることはないが、子宮頸癌のMISの場合はやはり予後不良の傾向が見られた。子宮頸癌のMISにおいては、対象症例を早期子宮頸癌に限定するなどの対策が必要であろうと考える。本邦では、早期子宮体癌およびIB1期までの子宮頸癌に対する腹腔鏡手術は保険適用となっているが、ロボット支援手術においては早期子宮体癌に対してのみ保険収載がなされている。これまでのエビデンスに鑑み、子宮体癌に関しては、たとえ進行例であっても傍大動脈リンパ節郭清術を含むMISであれば保険収載がなされるべきであろう。今後の進行子宮体癌に対するロボット支援手術を含むMISの保険収載が期待される。一方、子宮頸癌に対するMISはより慎重であるべきと考える。日本産科婦人科学会では、子宮頸癌に対する腹腔鏡手術の全例登録を義務付けているが、これによる大規模な予後結果の解析が待たれる。おそらくはMISの対象が、開腹術と予後の変わらないであろうIA2期以下または腫瘍径2cm以下の子宮頸癌に限定されることになろうかと思われる。MISが保険収載されることになれば患者にとって福音となるが、オンコロジーにおいては「低侵襲」よりも「生命予後」がより大切なファクターである。癌治療を行う者は、このことを決して忘れてはならない。

前へ戻る