演題抄録

会長企画シンポジウム

開催概要
開催回
第58回・2020年・京都
 

ロボット手術を利用した筋層浸潤膀胱癌の治療戦略

演題番号 : SSY1-5

[筆頭演者]
大山 力:1 

1:弘前大学・泌尿器科

 

従来、膀胱全摘除術と言えば、開腹膀胱全摘除術(open radical cystectomy:ORC)のことを示していた。ORCは筋層浸潤膀胱癌の標準治療とされてはいるものの、高度の侵襲を伴う治療法であり、現在においても周術期死亡率が数%存在し、合併症の頻度も20-60%であると報告されている。筋層浸潤膀胱癌はlethal disease であり、ORC単独で治療した場合の5年全生存率はいまだに50-60%程度とされている。この治療成績を向上させるために、拡大リンパ節郭清の実施が提唱されてきたが、拡大リンパ節郭清と標準郭清とを比較検討したランダム化比較試験(LEA AUO AB 25/02試験)では、拡大郭清の優越性は示されなかった。一方で、シスプラチンを含むneoadjuvant chemotherapyの予後改善効果は複数のランダム化比較試験と複数のメタアナリシスで立証されている。
このように悪性度が高く、根治性が重要視される膀胱全摘除術において、機能温存手術は可能なのであろうか?膀胱全摘除術において神経温存や前立腺、女性生殖器温存術式に関する大規模な無作為化試験は存在しない。後方視的研究が報告されているのみで、このClinical Questionに答えるための十分なエビデンスは現時点では存在しない。しかし、適切なタイミングでneoadjuvant chemotherapyを行った上で機能温存膀胱全摘除術を行い、自排尿可能な新膀胱を造設することによって、排尿機能と性機能を温存することは可能である。
2018年にロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術(robot-assisted radical cystectomy, RARC)が保険収載され、低侵襲膀胱全摘除術の実施が容易になった。RARCはORCと比較して、手術時間が長く、コストが高いが、入院期間が短く、出血量が少なく、G3の周術期合併症の頻度が少ないとされている。ORCとRARCを直接比較したランダム化比較試験RAZOR (randomized open vs robotic cystectomy) study の結果も報告され、2年非再発率においてRARCのORCに対する非劣性が明らかになった。長期成績に関するエビデンスはまだ十分とは言えないものの、今後はRARCが筋層浸潤膀胱癌の標準治療の地位を確固たるものにしていくものと思われる。
今回は、neoadjuvant chemotherapy、RARC、そして体腔内回腸新膀胱造設術という治療戦略によって、低侵襲でありながら高い腫瘍制御効果と機能温存効果を実現する当科の試みを紹介する。

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