演題抄録

会長企画シンポジウム

開催概要
開催回
第58回・2020年・京都
 

本邦における呼吸器外科ロボット手術の現状と展望

演題番号 : SSY1-1

[筆頭演者]
中村 廣繁:1 

1:鳥取大学・呼吸器・乳腺内分泌外科

 

<はじめに>
2018年4月の保険適応以来、ロボット支援胸腔鏡手術(Robot-assisted thoracoscopic surgery:RATS)は、呼吸器外科の低侵襲手術に新たな発展をもたらした。2020年4月には新たに肺悪性腫瘍に対する区域切除術と重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術が保険適応となり、本邦では年間約3000件のRATSが行われるようになった。RATSを安全に普及させるために、日本呼吸器外科学会(JACS)を中心に体制を整備してきた。
<RATS の現状と当教室の成績>
JACSでは、ガイドラインの策定、プロクター制度の確立、症例登録システムの構築により、RATSの普及をサポートした。RATSは胸腔鏡手術(VATS)と比較して利点を示す明確なエビデンスをいまだ認めず、2018年の肺癌治療ガイドラインでは「評価不能・推奨なし」となっている。当科では2011年1月にRATSを導入し、当初は肺癌に対して腫瘍径3cm以下(cT1N0M0)を適応としたが、現在はVATSとほぼ同じとしている。手術手技はCO2送気により気胸下に4アームを使用するCompletely portal robotic lobectomy(CPRL-4)を基本としている。大きなワーキングスペースを作成し、両手にバイポーラを用いること、ロボット用の自動縫合器やエナジーディバイスを適正に使用することにより精緻な操作が容易となる。現在までに、225例(肺悪性腫瘍141例、縦隔腫瘍84例)の手術を施行した。気管支形成術や進行癌に対する術前治療後の手術、浸潤型胸腺腫に対する周囲臓器の合併切除、新たな保険術式である区域切除、重症筋無力症の手術経験も増える中で、RATSが通常手術へと移行しており、従来のVATSとの住み分けは難しい局面を迎えている。特に、これまでコンソール医師を6名養成したが、修練医を含めた若手医師にとってRATSはまだ身近な手術とはいえず、教育・トレーニングは大きな課題である。
<RATSの展望>
RATSの将来展望において、そのメリットを証明することが大切である。そのために、症例登録システムを使用した効果的指標の分析は重要である。また、手術支援ロボットは新たな市場競争の時代に入り、AI、オンライン支援などの技術革新に伴う新たな応用や、リスク管理、教育、トレーニングの開発が今後のRATSの発展には必須となる。

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