演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

免疫療法の未来と課題

演題番号 : SY5-5

[筆頭演者]
中村 祐輔:1 

1:シカゴ大学・医学部

 

免疫チェックポイント抗体の成功は、がん治療における患者自身の持つ免疫力の重要性を再認識させ、免疫療法はがんの第4の療法としての立場を確固たるものにした。がん免疫療法は、1890年代の細菌毒による免疫活性化療法に端を発するとされる。その後、種々の免疫療法は期待と失望を繰り返し受けながら、今日に至った。免疫療法には多くの範疇のものが含まれ、免疫チェックポイント阻害剤だけでなく、抗HER2抗体に代表される増殖因子を標的とするものや抗CD19抗体のような細胞特異的分子を標的とする抗体医薬品などがある。ワクチン療法に関しては、1990年頃にがん特異的抗原(主にがん精巣抗原)を利用したワクチンの投与が開始され、注目を浴びた。一部の患者では、臨床的な有用性が示されたものの、標準化学療法後の免疫条件が非常に厳しかった患者さんを対象としたためか、米国で承認に至ったのは、前立腺癌に対するワクチン療法だけであった。現在は、もっと早い段階での臨床試験が実施されており、その結果が待たれる。最近では、遺伝子変異によって生じたアミノ酸変異を含む「ネオアンチゲン」が高い免疫活性化能を持つと期待され、臨床試験が開始されている。「変異抗原」が、がん特異的抗原となる可能性は20年以上前に、Schreiber教授によって示唆された。2016年には、我々は、マウスモデルで、変異抗原を認識するT細胞受容体(TCR)を導入したT細胞が非常に高い抗腫瘍活性を示すことを実証した。エキソーム解析・トランスクリプトーム解析によって、HLAに結合能の高いエピトープの予測は難しくないが、ペプチドが期待通りにプロセスされるか、それらの抗原を認識するリンパ球が存在しているかは、まだ、未知の部分が多い。細胞療法に関しては、第3世代のCAR-T細胞やがん特異的抗原NY-ESO-1を認識するTCRを導入したTリンパ球療法が血液腫瘍で非常に高い抗腫瘍効果を示している。さらに、TIL療法にも再度注目が集まっている。しかし、がん組織に浸潤しているリンパ球には、がんを攻撃する細胞だけでなく、がん細胞の増殖を補助するリンパ球があるとされ、両者の見極めが非常に重要となっている。われわれは、TCR・BCR配列を効率的に解析する方法を確立し、治療に伴うT細胞やB細胞の変化を追跡しており、それらの成果を踏まえ、今後の免疫療法の展望・課題を紹介したい。

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