演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

がんのT細胞療法

演題番号 : SY5-4

[筆頭演者]
池田 裕明:1 
[共同演者]
影山 慎一:2、石原 幹也:3、渡辺 隆:2、宮原 慶裕:2、北野 滋久:4、加藤 栄史:5、三嶋 秀行:6、山本 昇:4、岩瀬 弘明:7、服部 浩佳:8、舩越 建:9、小島 隆嗣:10、峰野 純一:11、珠玖 洋:2

1:長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科・腫瘍医学分野、2:三重大学・大学院医学系研究科・遺伝子・細胞治療学、3:三重大学附属病院・がんセンター、4:国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院・先端医療科、5:愛知医科大学・輸血部・細胞治療センター、6:愛知医科大学・臨床腫瘍センター、7:独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター・消化器内科、8:独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター・臨床研究センター、9:慶應義塾大学・医学部・皮膚科、10:国立研究開発法人国立がん研究センター東病院・消化管内科、11:タカラバイオ株式会社

 

免疫チェックポイント阻害療法が多くの難治性のがんに有効性を示し、大きなインパクトを示しつつあるが決して万能ではない。現在の抗PD-1/PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体による治療の有効率は多くのがん種で10-40%程度であり、免疫チェックポイント阻害療法抵抗性がんの治療法の開発が喫緊の課題である。
免疫チェックポイント阻害療法抵抗性がん患者にはがん特異的なT細胞の体内誘導に問題を抱えるケースが多く含まれると考えられる。したがって、がん特異的なT細胞を体外で人為的に大量に作成して患者に輸注するT細胞療法はこのような患者にも有効性が期待される治療法の一つである。実際、悪性黒色腫を中心としたがんに対する腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)療法、B細胞性腫瘍を中心としたがんに対するCAR-T細胞療法、一部の固形がんに対するT細胞レセプター(TCR)遺伝子導入T細胞療法など、近年がんに特異的に反応するリンパ球の輸注療法の有効性が次々に報告されている。
ただし今後のT細胞療法をより多くのがん患者に有効な治療法として届けるためには、用いる抗原の選択、CARとTCRの優位性の比較、受容体の親和性の向上、非自己細胞の利用、固形腫瘍への遊走/浸潤能、副作用の克服、癌による免疫逃避の対処、免疫抑制的がん微小環境の克服等、多くの課題が挙げられる。
我々は、がん抗原特異的なTCR遺伝子を搭載したトロウイルスベクターを作製しており、進行期の悪性腫瘍の患者を対象にこれらのTCR遺伝子を導入したリンパ球の輸注療法、いわゆるTCR-T療法の医師主導治験を多施設共同臨床試験として実施中である。最近、固形がんを対象とした高親和性NY-ESO-1抗原特異的TCR遺伝子導入T細胞の輸注により顕著な腫瘍縮小を示す症例を経験している。興味深いことに同時にサイトカイン放出症候群を示す例も経験しつつある。
また、非自己細胞の利用を可能とすることを目指し、T細胞の内因性TCRの発現を抑制しGVHD発症を軽減するベクター(siTCRベクター)を用いた、移植後再発ATLに対するTCR遺伝子導入ドナーリンパ球輸注療法の医師主導治験を準備中である。
本講演では、がんに対するT細胞療法の現状と今後の展望を概観すると共に、現在の課題の克服への試みとして我々が現在開発を進める遺伝子改変T細胞療法について紹介する。

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