演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

がんペプチドワクチン療法の臨床試験から得られた成果

演題番号 : SY5-3

[筆頭演者]
中面 哲也:1 

1:国立研究開発法人国立がん研究センター・免疫療法開発分野

 

我々はglypican-3(GPC3)ががん特異的抗原であることを見出し、特異的なCTLを誘導できるペプチドを同定し、肝細胞がんを中心としてGPC3ペプチドワクチン療法の様々な臨床試験を実施してきた。ワクチンの安全性と免疫学的有効性を確認し、臨床効果を誘導する可能性を示し、その成果は企業に導出されたが、抗PD-1抗体の効果が劇的だったこともあり、開発は難渋している。卵巣明細胞腺がんでも抗腫瘍効果が得られた症例を複数経験し、進行がんでも確かに効いたと言える症例は存在するが、現時点では進行がんに対する腫瘍縮小効果は限定的である。我々はペプチド腫瘍内局注療法や、抗PD-1抗体あるいはCD4陽性細胞除去抗体とワクチンとの併用療法など、ペプチドワクチン療法の効果増強法の有効性を基礎研究で証明できており、今後の臨床応用に期待したい。
再発予防効果に関して、肝細胞がん根治的治療後40例を対象として、GPC3ペプチドワクチン療法を補助療法として1年・2年再発率を評価する単アームの臨床第2相試験を実施した。GPC3発現陰性は予後良好因子のため、GPC3発現陽性例に限ってコントロール群と比較すると、GPC3ペプチドワクチン療法によって、再発率を抑えられる可能性が示唆されたが、1種類のペプチドワクチンでは再発を完全に抑えることはできないことも明らかとなった。一方、小児の再発を繰り返している肝芽腫の再発予防には有効性が期待できる結果が得られた。個別化がんワクチン療法の考え方も導入すれば、切除後も再発率の高いがんの再発予防法につながる可能性はある。
臨床試験の副産物として、ワクチン投与患者の末梢血やがん組織から、多種類のGPC3ペプチド特異的CTLクローンの樹立に成功した。これらの一部は、GPC3ペプチドを提示しているがん細胞を殺傷する能力の高いものであり、これらのT細胞レセプター(TCR)をクローニングすることにより、TCR遺伝子導入T細胞療法の開発に応用可能である。我々は、GPC3ペプチド特異的TCRを遺伝子導入したiPS細胞由来のT細胞を作製してがん治療に応用するT-CiRAとの共同研究を既に開始している。
同じく我々が同定したHSP105ペプチドワクチン療法の臨床第1相医師主導治験を完了した。奏効例は出なかったが、今後、腫瘍内局注療法とTCR遺伝子導入T細胞療法での開発を計画している。

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