演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

個別化・複合がん免疫療法の開発

演題番号 : SY5-1

[筆頭演者]
河上 裕:1 

1:慶應義塾大学・医学部・先端医科学研究所・細胞情報研究部門

 

最近、長年期待されていた抗腫瘍T細胞をエフェクターするがん免疫療法が、免疫チェックポイント阻害療法(PD-1/PD-L1阻害、CTLA4阻害)と培養T細胞を用いる養子免疫療法(腫瘍浸潤T細胞、TCR/CAR遺伝子導入T細胞)として、化学療法抵抗性の進行がんに対しても明確な持続する腫瘍縮小効果を示し、臨床の場でのがん免疫療法の位置付けは一変した。一方、まだ効果が認められない症例は多く、治療前や治療早期に治療効果を予測して、適切な症例や適切な免疫療法(免疫チェックポイント阻害か遺伝子改変T細胞療法かなど)の選択による個別化治療を可能にするバイオマーカーの同定、また免疫チェックポイント阻害療法不応例を応答例に変えることも含めて、治療効果増強のために複数のがん治療法や免疫制御法を組み合わせる複合がん免疫療法の開発が期待されている。治療前の免疫状態には個人差が大きく、がん微小環境などの免疫状態は、免疫療法に限らず、広くがん治療の反応性や予後に影響することが報告されつつある。がんの免疫状態の個人差は、がん細胞の性質(パッセンジャー変異に対するT細胞誘導系やがん遺伝子活性化による免疫抑制系など)、免疫調節分子の遺伝子多型などで規定される免疫応答能、さらに喫煙、腸内細菌叢、食事・肥満、ストレスなどの環境因子にも規定され、その機序の解明は、新規バイオマーカーや新規治療標的の同定のために重要である。免疫状態とその原因はがん種ごと、同じがんでもサブグループごと、さらに症例ごとに異なるので、個々の症例に対して効果的な免疫療法を行うためには、免疫状態評価により、個別化した免疫制御が必要と考えられる。我々は、各種がんで、オミックス解析などの手法も用いて、免疫状態を中心に症例をサブグループ分けして、サブグループごとに適切な免疫制御を実施する可能性を検討している。さらに現在の免疫チェックポイント阻害療法の治療効果を改善するために、がん免疫微小環境を制御する低分子化合物や抗体の探索、また、免疫チェックポイント阻害では効果が期待できない症例への培養T細胞を用いた養子免疫療法などの開発を進めている。

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