演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

遺伝性腫瘍への患者の意識と遺伝性腫瘍に係る遺伝カウンセリングの課題

演題番号 : SY11-6

[筆頭演者]
田辺 記子:1 

1:国立がん研究センター中央病院・遺伝子診療部門

 

 遺伝カウンセリング(Genetic Counseling;以下、GC)とは、疾患の遺伝学的関与について、その医学的影響、心理的影響および家族への影響を人々が理解し、それに適応していくことを助けるプロセスである。このプロセスには、1)疾患の発生および再発の可能性を評価するための家族歴および病歴の解釈、2)遺伝現象、検査、マネージメント、予防,資源および研究についての教育、3)インフォームド・チョイスおよびリスクや状況への適応を促進するためのカウンセリング、などが含まれる(日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」)。
 がん領域における従来型のGCでは、遺伝性腫瘍が疑われる人や、自身・家族の病気と遺伝との関係が気になる人が来談している。来談者の抱える問題について傾聴し・話し合い、必要な場合に疾患に焦点を当てた遺伝学的検査を提供し、検査結果およびその後のaction planについて説明・話し合いを行う、とした内容を提供している。
 実臨床においてGCに来談する人の背景や動機は多様である。我々が実施した乳がん患者対象の調査からは、家族歴がある人は遺伝の可能性について意識している人が多く、逆に家族歴がない人は遺伝の可能性を意識していない人が多いということが示されている。しかし、家族歴があることがGC受療に必ずしもつながってはいない。GC受診行動に関連する要因としては、医療者の勧め、家族のため、遺伝への興味などがあり、遺伝性腫瘍が疑われる人に対して主治医等がGC受診を勧めることはGC受療行動に影響する可能性がある。遺伝や遺伝性腫瘍に関する情報はがん患者やその家族、さらには一般市民にも有用な情報であり、情報を必要な人に必要な量だけ届けられる体制が望まれる。遺伝性腫瘍のリスクが低い人であっても、遺伝に関する心配を抱く人に対して適切な情報を届けることも重要である。
 GCを取り巻く新しい潮流として、近年のゲノム医療実装がある。遺伝性腫瘍に係るGCの現場には、新たな場面、特に「治療選択のための生殖細胞系列遺伝学的検査の実施」「体細胞系列クリニカルシークエンシングからの遺伝性腫瘍の原因となるバリアントの発見(二次的所見)」という場面が増えると考えられる。今後のゲノム医療の展開にもあわせて、GC提供体制を整えることが求められている。

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