演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

遺伝性腫瘍の婦人科領域における最近の展開

演題番号 : SY11-5

[筆頭演者]
平沢 晃:1 
[共同演者]
青木 大輔:1

1:慶應義塾大学・医学部・産婦人科

 

 婦人科領域における遺伝性腫瘍としては,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)に関連した卵巣癌,リンチ症候群に関連した子宮体癌と卵巣癌,およびPeutz-Jeghers症候群に関連した子宮頸部腺型腫瘍,卵巣腫瘍などが挙げられる.遺伝性腫瘍領域のエンドポイントは「がん発症高リスク群である遺伝子変異保持者に対するがん死の低減」である.
 これら遺伝性腫瘍の未発症遺伝子変異保持者に対しては,適切な「がん予防」を行う必要がある.婦人科遺伝性腫瘍の未発症遺伝子変異保持者に対しては,通常の検診事業における検出は念頭に置かれておらず,適切なサーベイランス策を講じる必要がある.とくに卵巣癌は有効なスクリーニング法が確立されておらず, 現時点でHBOCの原因遺伝子であるBRCA1またはBRCA2 (BRCA1/2)の遺伝子変異保持者に対する卵巣癌一次予防法としては,リスク低減卵管卵巣摘出術(risk reducing salpingo-oophorectomy: RRSO)が最もがん死低減効果が高いとされ,国内外の各種ガイドラインにおいて「推奨」とされている.
 一方で遺伝性腫瘍の原因遺伝子の変異は個別化治療のコンパニオン診断として用いられ始めている.2014年にPARP阻害薬のolaparibは,欧州医薬品庁(EMA)と米国食品医薬品局(FDA)よりBRCA1/2遺伝子の変異陽性卵巣癌に対する適応を承認した.PARP阻害薬はBRCA1/2タンパクの機能不全以外の原因による相同組換え機能欠損(homologous recombination defects: HRD)の状態にある細胞に対しても高感受性であることが知られている.卵巣癌の組織型別内訳は本邦を含む東アジアと欧米では著しく異なる.本邦におけるPARP阻害薬の承認を今後に控えて,卵巣癌HRDの解析を含めた卵巣癌個別化治療戦略の構築は喫緊の課題であるといえる.
 さらにがん関連遺伝子の生殖細胞系列変異領域ではBRCA1/2のデータシェアリングが急速に進んでいる.2014年に世界規模でのゲノムデータと臨床データを共有する基盤整備を目的にGlobal Alliance for Genomics and Health(GA4GH)が発足した.その中で代表的なプロジェクトの一つがBRCA1/2の変化の意義を共有することを目指すBRCA challengeである.今後本邦の実地臨床から産み出されたデータは,データシェアリングを介して国際貢献に寄与するのみならず,国民福祉および自分の目前の患者さんに還元することが可能となる.

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