演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

我が国における遺伝性乳癌卵巣癌に対する取り組み

演題番号 : SY11-4

[筆頭演者]
中村 清吾:1 

1:昭和大学・医学部・乳腺外科

 

遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer:HBOC)症候群は、乳癌或いは卵巣癌ともに、癌全体の5-10%を占める推定されている。また、BRCA1/2の病的変異が、主な発症要因とされる。近年、癌の診断を受けた患者の背景因子(年齢、乳癌や卵巣癌の既往)、家族歴、組織型(特に、トリプルネガティブ乳癌か否か)等から、治療方針の決定前にHBOCの可能性を推定することは、適切な術式や薬物療法を選択するうえで、ますます重要となりつつある。しかしながら、乳癌側から見ても、年間約9万人の新規乳癌患者が見つかるとして、乳癌既発症者だけでも、4500-9000人の遺伝性のがいると推定される。また、卵巣癌からは、乳癌の十分の一程度の頻度ではあるが、PARP阻害剤の適応の有無を調べるという、いわゆるコンパニオン診断として、BRCA検査が行われる可能性がある。その結果として、カウンセリング対象者や、家系員への対応を考慮する必要が生じ、診療体制の整備が急務である。そこで、2016年8月に、日本乳癌学会、日本産科婦人科学会、日本人類遺伝学会が中心となり、(社)日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構を設立した。
BRCA1/2の病的変異が認められた場合は、その後の対策としてNCCNガイドラインでは、①サーベイランス(年1回のマンモグラフィ+MRI検査等)、②化学予防(リスク低減薬物療法)、③リスク低減(予防的)外科治療(乳房切除術、卵管卵巣摘出術が選択肢として挙げられ、患者個々にとって、ふさわしい治療の選択肢が複数提示されることになる。遺伝カウンセリングは、各選択肢のメリット、デメリットへの理解を深めてもらうことの他、関連各科との良好なコミュニケーションを図る上でも、大変重要な要素である。また、初診の段階で、問診をなるべく正確に聴取し、カウンセリング対象者の一時拾い上げができるかというところは、乳腺専門医がしっかり対応すべき点である。
近年、BRCA2の病的変異が、 FANCONI貧血および家族性膵癌の原因となることが報告され、膵臓癌を専門とするグループの注目を集めている。また、BRCAの病的変異を有する男性では、前立腺癌の発症にも注意を払う必要がある。また、BRCAの病的変異を有する患者では、特に白金製剤の感受性が高く、また、PARP阻害剤も有望視され、各種臨床試験が進行中である。これらの薬剤は、再発乳癌の他、周術期に用いる等なお一層の進展が期待される。

前へ戻る