演題抄録

シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

遺伝性内分泌腫瘍の診療が抱える未解決の問題

演題番号 : SY11-1

[筆頭演者]
櫻井 晃洋:1 

1:札幌医科大学・医学部・遺伝医学

 

遺伝性内分泌腫瘍には,遺伝性下垂体腫瘍のような単一腫瘍を発症する疾患,家族性大腸ポリポーシス(甲状腺癌)やLi-Fraumeni症候群(副腎皮質癌)のように他臓器を主病変とする遺伝性腫瘍症候群に内分泌腫瘍を合併するものなどがあるが,内分泌臨床で主として遭遇するのは多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1),およびMEN2である.
内分泌疾患の多くは病変臓器と臨床症状を発生する臓器・組織が異なる.多くの内分泌疾患者が最初に受診するのは,通常内分泌の専門医ではない.また,MENでは最初の病変が診断された時点ではまだ他の病変が発症していなかったり,検索されなかったりするために,その後のフォローが適切になされず,結果として診断されずに終わる例も多い.単一内分泌病変からMEN患者を疑い,効率よく拾い上げることが重要であり,私達はこのプロセスを適切に進めるための診断アルゴリズムを公表している.甲状腺髄様癌についてはMEN2の有無を診断するためのRET遺伝学的検査が保険収載されたため,以前に比べて見落とし例は各段に減少すると期待される.
またMENのような頻度の少ない疾患では,治療の標準化についても十分なエビデンスを構築することは難しい.MENに合併する内分泌腫瘍に対しては,散発性腫瘍とは異なる治療戦略を選択すべき場合があるが,こうした認識が必ずしも医療者に共有されているとは言えない.希少疾患の臨床管理についての情報発信をより密に行う必要がある.
一方,当事者に視点をあててみると,内分泌疾患はもともと患者にとって病態を理解するのが難しい.それゆえ患者にとっては,腫瘍に罹患したという心理的負担に加え,自身が罹患している疾患の理解の難しさや子どもへの遺伝,情報の少なさや相談できる医療者,当事者の少なさがますます重荷となりうる.こうした思いを認識し,共感しつつ,患者や家族の最善の意志決定を支援するために遺伝医療が担う役割は大きい.
本シンポジウムでは,遺伝性内分泌腫瘍診療の現場において,いまだ解決できずに抱えている問題をあぶりだすことによって,今後の診療のあり方を考えてみたい.

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