演題抄録

パネルディスカッション

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

cT4食道癌に対して腫瘍内科医ができること、外科医に望むこと

演題番号 : PD9-6

[筆頭演者]
横田 知哉:1 

1:静岡県立静岡がんセンター・消化器内科

 

T4食道癌、すなわち根治切除不能局所進行食道癌に対する標準治療は、シスプラチン/5-FU(CF療法)を同時併用する化学放射線療法(CRT)であるが、充分な治療成績が得られているとは言い難い。照射を先行することにより、治療に関連した気道穿孔や瘻孔形成、血管損傷などが時に経験され、照射野における広範な食道狭窄によって嚥下障害をきたし、食道拡張術やステント留置などの介入を必要とすることもある。また、照射による局所の線維化により、CRT後の遺残病変に対する救済手術の安全性が懸念される。
CF療法にドセタキセルを加えたDCF療法は、CRTに匹敵する局所制御が可能であるため、DCF療法を導入化学療法として先行させることによりdown-stagingを図ることが期待される。さらにタキサン併用により化学療法の治療強度が高まることで、微小転移を抑制し、遠隔転移再発を抑制する可能性もある。
我が国では、DCF療法後にCRTを行う多施設共同第Ⅱ相試験が行われ、その忍容性が示された。さらに、DCF導入化学療法の奏効に応じてその後の治療方針を振り分けるchemoselectionは、切除可能局所進行頭頸部癌に対して手術を回避し喉頭を温存するための標準治療の一つであるが、食道癌では逆にT4をdown-stagingさせることによってconversion surgeryを目指した治療戦略として検討されている(COSMOS試験)。upfront治療に照射を用いないことで周術期合併症を減少させ、食道切除によって経口摂取が維持できればQOLを改善させることも期待される。第Ⅱ相試験として行われたCOSMOS試験の1年生存割合は67.9%、生存期間中央値は35.6か月(2017年4月現在)、手術病理所見にて39.6%でR0切除が可能であった。DCF療法中の瘻孔形成は4.2%のみであり、特記すべき術中合併症はみられなかった。このように、cT4食道癌であっても、集学的治療の中に導入化学療法をうまく組み入れることによりconversion surgeryが安全に施行され、長期生存が期待されることが示唆された。
治療体系が複雑なT4食道癌の治療では、腫瘍内科医と外科医、放射線腫瘍医との密な連携が重要である。その中で、CRTや導入化学療法を安全に行い、その後の根治手術・救済手術にうまくバトンタッチしていくことが、腫瘍内科医の役割であろう。画像診断の精度(T3 or T4)や、T4食道癌に対する栄養管理、QOLの評価等は今後の研究課題として挙げられる。

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