演題抄録

パネルディスカッション

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

進行期精巣胚細胞腫瘍の治療戦略

演題番号 : PD11-2

[筆頭演者]
河合 弘二:1 

1:筑波大学・大学院人間総合科学研究科・腎泌尿器外科

 

精巣胚細胞腫瘍(以下、精巣腫瘍)は希少癌ではあるが胚細胞腫瘍の中では最も多い病型であり基本的な治療戦略は確立している。治療強度(投与量及び投与間隔)を維持した1次化学療法と必要に応じた残存病巣の外科的切除(後腹膜リンパ節郭清:RPLNDが最多)が治療の根幹であり、わが国では両者を泌尿器科医が担当することが多い。進行期精巣腫瘍の治療では国際予後評価であるIGCCC分類が重要であり、予後良好群にはBEP3コースが、中間群及び不良群にはBEP4コースが標準治療である。ブレオマイシン肺炎のリスクが高い50歳以上の症例ではBEPの代替療法として予後良好群にはEP4コース、予後中間群及び予後不良群にはVIP4コースの適応を考慮する。1次化学療法は減量せずに3週サイクルで行う必要がある。仮に4週サイクルで行った場合、高い治癒率は担保できない。1次化学療法で腫瘍マーカーが陰性化すれば、残存病巣の手術適応や手術方法について検討する。ただし仮に、化学療法中に腫瘍マーカーが陰性化しても、上記の治療回数は完遂する必要がある。腫瘍マーカーが陰性化しない場合には、わが国ではsequential にTIPなどのタキサン併用化学療法を継続するのが一般的である。この場合、腫瘍マーカーが治療継続の判断根拠となるため各マーカーの偽陽性に留意する必要がある。LDHはG-CSF投与後の白血球増多時に一過性に上昇する。AFPでは薬剤性肝障害による偽陽性がよく経験され、AFPレクチン分画が鑑別に有用である。また、化学療法により性腺機能が低下した場合に下垂体からhCGが分泌されることが知られている。下垂体性hCGはテストステロン(T)製剤を投与すれば分泌が抑制されることが知られており、このT負荷テストが鑑別に有用である。これらの偽陽性の可能性が否定されれば、基本的に腫瘍マーカーが陰性化するまで化学療法を継続することが望ましい。ただし、AFPの減衰が緩徐(プラトー)になり、かつ完全切除が可能なリンパ節転移のみが残存した場合には化学療法を終了しAFP陽性手術を適応することもある。AFP陽性手術の判断は上記の条件のほかに他部位で奇形腫が組織学的に証明されている、あるいはのう胞成分や粗大な腫瘍内石灰化の存在など、複数の臨床情報を組み合わせて総合的に行うべきである。近年では治療強度を維持したBEPの普及、2次化学療法の進歩などにより、予後不良群の予後は著明に改善しつつあり、5年生存率は80%以上である。

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