演題抄録

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開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

偽陰性N0リンパ節に対するリンパ行性薬剤送達法の基礎理論と治療評価

演題番号 : P8-1

[筆頭演者]
小玉 哲也:1,2 
[共同演者]
堀江 佐知子:1,2、森 士朗:1,2,3

1:東北大学・大学院医工学研究科・腫瘍医工学分野、2:東北大学・大学院医工学研究科・がん医工学センター、3:東北大学・病院・歯科顎口腔外科

 

リンパ節介在血行性転移理論は,原発巣からの腫瘍細胞が所属リンパ節の辺縁洞に到達した段階で, リンパ節被膜下に存在する静脈に腫瘍細胞が浸潤し全身転移を来すと考える理論である.
この理論に基づけば, 転移初期段階である偽陰性N0リンパ節の治療あるいは予防的治療をおこなうことで全身転移を多くの症例において予防できることになる. 偽陰性N0リンパ節を含む転移リンパ節に対する現行の全身化学療法では, リンパ節内での薬剤の貯留性や血管への薬剤の再吸収により転移リンパ節の奏効率は必ずしも高いとは言えず, 新たな薬剤投与法の開発が求められている. われわれは偽陰性N0リンパ節のリンパネットワーク上流のリンパ節(センチネルリンパ節を含む)に薬剤を注射するリンパ行性薬剤送達法を提唱してきた.本手法ではリンパ節に直接薬剤を注射することでリンパネットワークを介して転移リンパ節内に高濃度の薬剤を長時間貯留させることができる.
本手法の有効性を実証するために, ヒトのリンパ節と同等の大きさを有するリンパ節腫脹マウスMXH10/Mo-lpr/lprを使用した.まず,腸骨下リンパ節 (SiLN) に腫瘍細胞を移植し, リンパネットワークにおいて下流に位置する固有腋窩リンパ節 (PALN) に転移を誘導する. PALNの上流に位置する二つのリンパ節(SiLNおよび副腋窩リンパ節:AALN)に薬剤を注射し, PALNに薬剤を送達させる. SiLNからPALNへの薬剤送達においては, SiLNからPALNに向かうリンパ管内に腫瘍塊が形成され薬剤の流れが閉塞されるまでは薬剤送達が可能なこと, AALNからPALNへの薬剤送達においては, リンパ管内での腫瘍塊が形成されないためにAALN からPLANまでの薬剤送達が可能であることが示された. 治療実験としてSiLNからPALNに転移を誘導し, AALNからPALNに薬剤送達(フルオロウラシル:5FU),イリノテカン塩酸塩:CPT-11)をおこなった場合, PALN内の腫瘍増殖を有意に抑制することが示された.
本リンパ行性薬剤送達法は,偽陰性N0状態にあるひとつのリンパ節をわずか抗がん剤1滴ほどの量で治療することができると見込まれ,この投与量は全身化学療法の投与量に比べ著しく少ない量である.
本手法はこれまで高齢や他の疾患でリンパ節郭清術の適応が困難であった患者や,手術では切除が困難なリンパ節郭清域外のリンパ節も治療できることになり,抗がん剤の副作用やリンパ節転移に悩む多くのがん患者を救済できる画期的な治療法になるものと期待される.

キーワード

臓器別:造血器・リンパ

手法別:局所療法

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