演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第55回・2017年・横浜
 

腎癌薬物療法の現状と展望

演題番号 : OSY12-3

[筆頭演者]
篠原 信雄:1 
[共同演者]
大澤 崇宏:2

1:北海道大学・大学院医学研究科・腎泌尿器外科、2:北海道大学・病院・泌尿器科

 

腎癌に対する薬物療法は、分子標的療法薬の登場とともに大きく変化した。2008年にスニチニブ、ソラフェニブが適応承認されて以来、現在6剤(VEGFR-TKI:スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、アキシチニブ、mTOR阻害剤:テムシロリムス、エベロリムス)が有転移腎癌の治療に広く用いられている。腎癌診療ガイドラインにおいても、初回治療では予後良好群、中間群でスニチニブ、パゾパニブ、予後不良群でテムシロリムス、スニチニブが推奨されている。一方VEGFR-TKI使用にも関わらず進展した例ではアキシチニブ、エベロリムスが推奨され、このような形の治療戦略が一般化した。その結果、欧米のみならず、本邦においても有転移腎癌の予後は大きく改善した。また、これら薬剤の導入時には、多くの予期せぬ有害事象、特に手足皮膚反応、間質性肺炎、口内炎などの対処に苦労したが、現在では多くの施設で治療経験の蓄積とともに、有害事象に対する対応も問題なく行えるようになっている。
一方、新たな治療薬として免疫療法剤PD-1/PD-LI抗体が登場し、腎癌治療は再度大きな変革の時代を迎えた。VEGFR-TKI抵抗例に対する2次治療としてPD-1抗体の一つであるニボルマブとエベロリムスの治療効果を比較するランダム化第3相試験(Checkmate 025)の結果が報告され、ニボルマブ投与により生存期間の有意な延長が得られることが明らかにされた。本邦においても2016年9月に有転移腎癌に対する適応が承認され、臨床の現場で広く用いられてきている。現時点ではその有効性についてはまだ十分明らかにされたとはいえないが、今後有転移腎癌に対する治療薬として重要なポジションを占めると考えられている。ただ他の癌腫でも指摘されているが、治療コストの大きさや免疫関連有害事象の問題などがあり、これらの有害事象に対する対策の確立とともに、投与すべき適格症例の選択に関する検討が必要である。欧米では現在PD-1抗体やPD-L1抗体と他の免疫療法薬の併用や、分子標的薬との併用に関する臨床研究が実施されてきている。今後これらの結果が報告されると、有転移腎癌に対する薬物療法がさらに大きく変わる可能性も考えられる。
本講演では、PD-1/PD-L1抗体登場後の本邦における有転移腎癌治療の現状を概説するとともに、腎癌に対する薬物療法に関する展望について解説したいと考えている。

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